2017 Fiscal Year Research-status Report
接合部破壊型の外柱－基礎梁－杭部分架構の終局耐震性能評価
| Project/Area Number |
16K18179
|
|---|
| Research Institution | The University of Tokyo |
|---|
Principal Investigator |
大西 直毅 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20579784)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
| Keywords | 終局耐力 / 機械式定着 / 柱降伏型 / 基礎梁 / 二段配筋 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、杭基礎と基礎梁の接合部に損傷が生じる場合の耐震性能を実験によって明らかにすることである。2015年度の実験により、パイルキャップ接合部のコンクリートに生じたひび割れが拡幅し、それによって架構の耐力が決定される場合には、設計上の柱降伏時の強度に達しない可能性が示唆された。
2017年度はこの実験結果を基に，基礎梁主筋を機械式定着とした場合の柱脚部の曲げ変形機構のモデル化を試みた論文を発表した。このモデルは機械式定着端の破壊を掻出し破壊ではなく，機械式定着を通る斜めひび割れ面における曲げ破壊と捉えたもので，斜めひび割れ面を横切る主筋と帯筋の引張強度を用いて，柱主筋降伏時と柱曲げ終局時の強度を算出できる。
また2017年度には，基礎梁主筋端を機械式定着とした試験体4体と折曲げ定着とした試験体1体の正負交番繰返し載荷試験を行い，柱主筋が降伏し，終局強度に達するときの変形性状，主筋と帯筋のひずみ分布のデータを得た。
これらの実験から現時点で得られた知見をまとめると以下の通りである。(1) 柱のせん断補強筋量が0.21%から0.48%に増加すると，最大耐力の7%の上昇が見られた。(2) 直線の梁主筋の先端に機械式定着具を用いた主筋は反対方向の加力時の圧縮によって付着力が接合部内で十分に発揮されない可能性がある。(3) 基礎梁主筋を1段とした3体の試験体については，提案した終局耐力評価モデルにより実験結果を概ね精度良く評価できる。(4) 機械式定着と折曲げ定着の2体の2段配筋試験体を比較すると，機械式定着では梁主筋定着部周辺の損傷が大きく，梁上端圧縮時に変形角2%での荷重低下が見られたが，梁上端引張時には折曲げ定着の試験体に比べて機械式定着の方が最大耐力は高く，変形角2%まで著しい荷重低下は見られなかった。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に予定していた接合部架構の実験を延期していたため２年目に予定していたすべての実験を行ったものの，１月に加力した２体の試験体のデータの考察が進んでいない。
|
| Strategy for Future Research Activity |
初年度に行う実験を１年遅れで実施したため、３年目に予定していた実験は２年目に前倒しで行った。
３年目は実験結果から、架構の履歴性状、終局（破壊）状態、計算値との比較、最大耐力後の劣化性状を引き続き調べる。加えて実験結果をベースに有限要素解析ソフトを用いた解析手法の検討と内部応力等の検証を行う。機械式定着端から伸びる接合部内ひび割れに対する解析手法は2016年度に検討を行い、ある程度の損傷状態までは解析できている。数値解析によってひび割れ界面周囲の応力状態がどのようになっているかに注目する。
主に以下の３点について検討を行う。(1) 柱梁曲げ強度比が1に近い試験体としたときに接合部の損傷がどの程度変わるかについて、変形角を柱、梁、杭、接合部に分離して整理する。(2) 接合部の補強によって最大耐力後の劣化性状に生じる変化に着目し、接合部をどのように補強すべきかについて検討する。(3) 構造実験と数値解析から破壊の伸展のメカニズムを分析し、２年目に提案した接合部破壊時の架構の耐力算定方法の修正をする。
最後に、３年間にわたって実施した構造実験、数値解析、耐力計算方法の成果をまとめる。報告書、論文、講演資料などの成果物を作成し、鉄筋コンクリート造基礎接合部の実用設計の発展に資するさらなる研究につなげる。
|
| Causes of Carryover |
北大での実験および打合せの旅費を抑えたことで次年度使用額が生じた。次年度は国際会議の発表を控えており，その参加登録費に充てる。その他の次年度費用については，主に国内の研究会議の旅費と計画中の論文投稿費に充てる。
|
