2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18194
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
浅野 浩平 都城工業高等専門学校, 建築学科, 助教 (90735119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 繊維配向性 / 寸法効果 / スナビング効果 / 単繊維引抜性状 / 架橋則 |
Outline of Annual Research Achievements |
繊維配向性を考慮したHPFRCCの力学性能評価を行う上で基礎となる、配向角を有する単繊維引抜試験を実施した。本実験では、これまでに前例のない、配向角75°を実験パラメータとして導入した。一般的に配向角が大きくなる程、繊維がモルタルより引き抜かれる抵抗性は増大することがスナビング効果として知られている。本実験の結果、配向角が60°まではスナビング効果が確認できたが、75°の場合は引抜抵抗力が大幅に減少するといった新たな知見が得られた。実験をリアルタイムでデジタル顕微鏡で拡大しながら観測した結果、配向角が75°の場合、引抜抵抗力を増大させる要因であるモルタルが、繊維によって剥離する現象が見られた。モルタルが剥離することにより、モルタルからの反力が繊維に伝達することがなく、摩擦抵抗力が減少したと思われる。 HPFRCCの寸法効果評価を行うため、一軸引張試験を行った。試験体寸法が異なる4つの試験体に対し、打設方向を実験パラメータとして加えた。実験の結果、試験体軸方向を重力方向とする縦打ちでは、試験体寸法が小さくなる程、引張強度が大きくなる傾向が見られ、寸法効果が概ね確認できた。横打ちでは試験体寸法に関わらず、引張強度が概ね等しく、寸法効果は確認できなかった。実験後の試験体ひび割れ断面を観察した結果、繊維の配向性は試験体寸法が小さい程、試験体軸方向に強く配向する傾向が顕著に見られ、実験結果とは反する結果のように考えられるため、試験方法を再考した上で、再実験を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
配向角を有する単繊維引抜試験については、新たな知見を得ることが出来たため、本研究については発展的な実験および考察を実施する余裕もあり、当初の計画よりも進展している。 一軸引張試験による寸法効果評価については、寸法効果を実験的に確認することはできたものの、発現するメカニズムについて不明な点が多い。現状では、実験報告に留まる結果しか得られていないが、実験パラメータの追加および実験方法の改善によって解決する可能性が高く、概ね順調に進展している。 可視化実験による繊維配向性評価については、繊維配向を捉えた画像より、繊維配向角分布を取得することを目的としている。画像中の無数の繊維の角度を取得する手法として、フーリエ変換を用いた画像処理を行ったものの、様々なノイズにより、繊維配向角分布の取得が困難であったため、当初の計画よりも多少遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
配向角を有する単繊維引抜試験については、新たにデジタル顕微鏡を導入することによって、引き抜かれた繊維表面を観察し、配向角の違いによって繊維断面の欠損の定量化を試みる。これによって繊維が性能発揮できる限界の配向角の把握や、スナビング効果に関する詳細なメカニズムの解明が期待できる。 一軸引張試験による寸法効果評価については、安定した実験結果を得るために、試験体の検長区間に誘発目地を設ける。さらに他テーマとの関連して、繊維混入率をパラメータとした実験を試みる。 可視化実験による繊維配向性評価については、繊維混入率を実験パラメータとした繊維配向角分布の取得を行う。当初の画像処理手法では困難であったため、黒色のターゲット繊維を試験体体積当たり0.1~0.2%添加し、ターゲット繊維の繊維配向角分布を取得することによって、全体的な繊維配向角分布の把握を試みる。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、所属する勤務校に設置されているコンクリートミキサーが、研究対象のモルタルを練るためには不向きであったため、ミキサー購入額を計上していた。交付額が予定よりも減額されたため、初年度は研究資金不足が生じる恐れから、ミキサーの購入を見送った次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度繰り越し分と合わせて、ミキサー購入を検討する予定ではあるが、他の実験を実施するにあたって資金面で支障が出る可能性もあるので、慎重に検討したい。場合によっては、実験用各種センサーや器具の購入に充てる。他については、当初の予定通り使用する計画である。
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