2016 Fiscal Year Research-status Report
既存RC部材の損傷を考慮した耐震補強接合部の最適実験法の提案と設計施工の高度化
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16K18195
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
高瀬 裕也 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (30515911)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 耐震補強 / 目荒らし / 形状測定 / 形状分析 / 有限要素解析 / せん断応力伝達機構 / 組み合わせ応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,1)RC耐震補強架構の有限要素解析,2)コンクリート目荒らし面の形状測定と形状解析,3)組み合わせ応力を受けるあと施工アンカーの力学挙動の評価について検討した。以下に,各項目の研究実績の概要を記述する。 項目1):2次元非線形有限要素解析により,耐震補強架構における接合部の挙動(ずれδと目開きωの関係)を把握することを試みた。1層1スパン(階高2500mm,スパン5000mm)の既存架構に,逆ハの字型の鉄骨ブレースで補強した耐震補強架構をモデル化して,梁断面(B×H=300×500~400×700)および接合部の界面に設定したボンドリンク要素の構成則をパラメータとして,約100ケースのパラメトリックスタディを実施した。層間変形角が1/200になるまで水平変位を与えた結果,接合部破壊を想定した解析モデルでは,ω/δ=0.5~1.5でδ=1mm程度まで接合部に変位が生じること,接合部が破壊しない解析モデルでは,ω/δ≦0.5でδ≦0.4mm程度の変位が生じることが明らかとなった。 項目2):目荒らし面積を10%~75%に変動させた場合の目荒らし面の形状測定・形状分析を実施した。この結果,目荒らし面積が大きくなるにつれ,傾斜角0rad.の成分が小さくなっていく傾向を定量的に得ることができた。この形状分析の結果を用いて,今後,力学モデルを構築する予定である。 項目3):既往の研究で実施した,一定引張力を与えた接着系あと施工アンカーのせん断載荷実験の結果を,より詳細に分析した。この結果,引張力を違えた場合であっても,せん断方向成分によるエネルギー吸収量と,鉛直方向成分におけるエネルギー吸収量の総和に,大きな差異が生じないことが明らかとなった。これにより,組み合わせ応力を受ける接着系あと施工アンカーの目開き量の推定(力学モデルの構築)に大きく寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の項目1)について,接合部破壊しない条件で解析した耐震補強架構では,目開きは十分小さい値であったが,接合部破壊する条件で解析した場合には,ずれ変位δのおよそ0.5~1.5倍の目開きωが生じることが分った。本来は,柱断面,柱スパンおよび階高もパラメータとして解析する予定であったが,予想以上に有限要素解析による,耐震補強架構の力学挙動の再現が困難であり,平成28年度の当初予定の項目を全て実施することはできなかった。ただし,基本モデルは出来上がっているため,平成29年度にはこれらのパラメータを違えた解析を追加で実施する。 上記とは反対に,当初計画では平成29年度に実施する予定であった,「コンクリート目荒らし面の形状測定・形状分析」を前倒しで実施した。さらに,組み合わせ応力を受けるあと施工アンカーの力学挙動の評価を実施した。本検討の結果,あと施工アンカーに作用する引張力が異なっても,全エネルギー吸収量に大きな違いないと言う,極めて重要な知見を得ることができた。 以上より,当初予定に対し,やや遅れ気味の課題もあるが,前倒しで進められた項目もあることから,「(2)おおむね順調に進展している」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果を受け,平成29年度以降は以下の研究に取り組む。なお,【 】内の記述は,申請書の研究計画に即した実施課題である。 【1.有限要素解析による接合部のずれと目開きの関係の評価】平成28年度に作成した基本モデルをベースとして,柱断面,柱スパンおよび階高を違えた耐震補強架構の解析を実施し,接合部の変位場についてより詳細に調査する。 【2.接合部の変位挙動を的確に再現したせん断実験】当初予定では,有限要素解析により接合部の変位場を調査し,これを再現する実験を実施する予定であったが,現状の検討結果においては,予想とは異なり通常設計時の接合部の目開きが非常に小さかったことから,まずは軸応力一定実験(圧縮応力,軸力ゼロ,引張応力)を行って,目荒らし面の力学挙動を検証する。 【3.あと施工アンカーと目荒らしの相互作用を考慮した力学モデルの構築】上記2.の実験結果を用い,力学モデルの構築を試みる。この力学モデルで採用する要素モデルについては,目荒らしおよびあと施工アンカーともに,既に基礎モデルはほぼ完成している。これらの基礎モデルに,両者が組み合わさった時の相互作用について検証する。 【4.接合部の変位場を考慮した設計手法および最適目荒らし形状の構築】上述した全ての課題を踏まえ,最適な目荒らし形状の提案と接合部の最適な設計法を構築する。
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Causes of Carryover |
目荒らし面の形状測定で使用する予定であった機器が故障していたため,「その他」の費用を削減して新たに導入することとした。これに伴い,平成28年度の当初予算と実績に差額が生じた。ただしその差額は,1,148円と小さいため,概ね予定通りに執行していると判断される。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額は1,148円と小額であることから,歪ゲージ等の消耗品の追加分に補填する計画である。
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Research Products
(2 results)