2016 Fiscal Year Research-status Report
建築設備システムの省エネ化投資のリスク評価を可能にする確率モデルの開発
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16K18198
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
富樫 英介 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 准教授 (00547078)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 確率モデル / 執務者 / 内部負荷 / 事務所 / webアンケート / オフィス / エネルギー / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境・エネルギー問題は喫緊の課題であり、建築設備分野においても省エネルギー化投資に関する各種の研究が行われている。特に近年では技術的な観点に留まらず、コストを含めた経済合理性に踏み込んだ検討が進められている。しかし、現在の経済性検討は単純投資回収年数などによる評価が主流であり、建築設備システムが本質的に持っている不確実性を明示的にモデル化し、リスク・リターンの関係性の中で建築設備の省エネルギー化投資の優先順位や最適投資配分を把握しようとしたものは少ない。本研究は、オフィスの運営側と使用者側に対して大規模調査を行うことで、建築設備システムの不確実性の源である「実建物の使われ方」を明らかにし、リスク評価を行う上で不可欠となる建物使用条件の確率モデルを開発・整備することを目的とするものである。 上記の目的を達成するため、2016年度はオフィスの運営側と使用者側に実施するアンケートの内容について施設運営の有識者にヒアリング調査を行った。また、この結果をもとにして具体的にWebアンケートシステムを構築して実施した。執務者側からは1000件(男女500人ずつ、年代カテゴリ100件ずつ)の回答を得た。運営側からは約500件の回答を得た。 執務者側アンケートに関しては、結果をもとに執務者行動の確率モデルを構築した。出社・退社時刻、徹夜作業、休日出勤、昼休み、その他の一時入退室、について男女別・年齢別に傾向の違いを統計的に検定するとともに、それぞれの確率モデルを作成した。さらに個別の確率モデルを統合し、1 日の執務者行動を模擬するモデルを作成した。年間の計算を試行し、過去の実測調査との整合性を確認した。これらの成果に関しては既に空気調和・衛生工学会の論文集に投稿して採用されている。また、モデルのプログラムソースコードおよびアンケートの元データに関してもWebサイトにて公開済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は建築のエネルギー計算の基礎となる建物の使われ方の不確実性を捉えるモデルを構築することにある。このための基礎データを得るためにアンケートを実施するが、調査対象は建物使用者側と運営者(管理者)側である。 前者に関しては、当初予定では2016年度にアンケートを終了し、2017年度に確率モデルの開発を行う予定であった。しかしアンケートの実施期間が想定よりも短く済み、また、その後のデータ解析も順調に進んだ結果、既にモデルの構築は完了し、論文投稿と公開も終えている。さらに現在は建物モデルと連成するテストも開始している。 後者に関しては、当初予定では紙媒体で4000社程度に配布する予定であったが、有識者ヒアリングの結果、回収率がかなり小さくなる(10%を下回る)危険性があることが予想された。そこで、執務者アンケートで用いたWebアンケートでの実施可能性を調査したところ、建物管理者のみを絞り込みつつ数百件の回収が可能であることがわかった。結果としてはWebアンケートを用いることで、予定を上回る500件以上の回答を得ることができた。このデータに関しては分析を開始しており、その一部については5月に開催される学会大会で報告の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの所、本研究はすべて計画を上回る速度で順調に進んでいる。2017年度は予定の手順に従い、建物管理者側からのアンケート結果にもとづいて建物運営者側の確率モデルの構築に進む。 また、空気調和・衛生工学会にて、リアリティを追求した建物熱環境・エネルギー消費に関するエミュレータ構築の委員会を組織することができたため、本研究の成果を同委員会のモデルに組み込み、その有効性を確認する予定である。
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Causes of Carryover |
無理に使い切る必要がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料の購入にあてる。
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