2016 Fiscal Year Research-status Report
人口減少都市の多様な低未利用地に対応する統合的再生手法の研究
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16K18205
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒瀬 武史 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (50598597)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低未利用地 / 総合計画 / 人口減少 / 非都市化 / ブラウンフィールド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国のラストベルト地域(衰退した工業都市が点在する五大湖沿岸および北東部)の人口減少都市を対象に、多様な低未利用地の再生を統合的に構想する手法とその効果を明らかにすることを目的としている。 初年度の取り組みとして、対象地域の中規模都市を対象に、主な人口減少都市(ピーク時と比較して人口が40%以上、2010年人口が5万人以上)の都市計画の取り組みを概観した。その中から、人口減少を前提とした新たな都市計画の取り組みを行っている自治体について精査し、ミシガン州デトロイト市とフリント市を対象に、低未利用地を中心とした人口減少に特に大きな影響を与えている地区の計画について検討した。ニューヨーク州バッファロー市については、工場跡地とその周辺地区の一体的な再生を検討する計画支援事業について、調査した。 デトロイト市では、慈善財団による積極的非都市化を推進する戦略的枠組みが提示され、地区単位で住民と協力した草の根活動による低未利用地の活用実験が進められている実態を明らかにした。特に財団が進める住民向けの空き地利用ツールキットについて、策定の背景と実態の調査を進めた。 フリント市については、自治体がオバマ政権下の連邦政府のコミュニティ・チャレンジ補助金を活用して策定した総合計画と、総合計画に基づくゾーニング改訂における課題を調査した。関連して連邦政府補助金Hardest Hit Fundを活用した、荒廃除去の取り組みについても情報収集を進めている。また、GMの自動車工場跡地の緑地化に関する資料収集を行い、人口減少下の工業都市が中心市街地近傍にある工場跡地に対して行った取り組みについて調査を進めた。 バッファロー市は、工場跡地が集積するサウス・バッファロー地区の取り組みを事例に、工場跡地と周辺地区の一体的な再生を進める計画技法について調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象都市として、米国ミシガン州の人口減少都市の取り組みについて、人口減少に対応した総合計画やゾーニングの概ねの計画策定の経緯および実施にあたっての課題を把握することができた。現地の自治体も複数回にわたり、聞き取り調査に回答いただくなど、調査は概ね順調に進展している。特に実際に住民の権利を制限するため、困難が予想される新規住宅建設の禁止など、具体的な制限を検討する際の課題についても情報を得ることができた。 一方で、我が国への適用可能性を検討するあたっては、新規住宅建設のような厳しい制限の実行にあたり、ランドバンクが一定の機能を果たしているなどの特徴があり、米国と日本の都市計画制度や土地所有に関する違いについても、十分に検討する必要がある。日米の共通性だけではなく、土地に関する制度や意識の違いにも留意して慎重に研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
主な研究対象を米国のラストベルト地域として、人口減少と低未利用地の発生に対応した計画策定や制度の検討を進めている自治体の調査を継続する。主な視点として、人口減少に対応した土地利用規制(ゾーニング)及び総合計画(Comprehensive Plan)の検討・策定、工場跡地(ブラウンフィールド)とその周辺の低未利用の住宅地の一体的な再生の2点を設定して、研究を推進したい。 なお、ミシガン州フリント市については、本研究の成果とこれまでの国内の研究者の成果を共有し、日本への適用可能性を検討するために、小規模な研究会を2017年度中に実施予定である。
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Causes of Carryover |
概ね海外調査は順調に進捗しているが、調査対象都市において、水道汚染の事故が発生するなど、都市計画以外の分野で、想定していなかった状況が発生したため、市役所の体制が一部混乱していた。そのため、一部の調査を2017年度に繰り越したため、旅費として使用する予定であった金額を一部、2017年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の5月に、2016年度に実施予定であった海外調査を実施する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 都市経営時代のアーバンデザイン2017
Author(s)
西村 幸夫, 高梨 遼太朗, 黒瀬 武史, 坂本 英之, 窪田 亜矢, 阿部 大輔, 宮脇 勝, 野原 卓, 鈴木 伸治, 柏原 沙織, 楊 惠亘, 鳥海 基樹, 中島 直人, 岡村 祐, 坪原 紳二
Total Pages
224
Publisher
学芸出版社