2016 Fiscal Year Research-status Report
保育施設における津波時の市街地避難計画の検証手法に関する研究
Project/Area Number |
16K18208
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
PINHEIRO Abel 神戸大学, 工学研究科, 助教 (50751690)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 乳幼児 / 災害時要援護者 / 避難行動要支援者 / 市街地避難 / 広域避難 / 津波避難 / 避難時間推計 / 避難行動モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
保育施設では、大規模地震時の津波襲来により、歩行が困難な乳幼児の避難の対応が課題となっているが、市街地レベルの安全な場所への広域的な避難が求められる場合の避難能力や支援体制については、これまでに十分な研究が行われていない。本研究では、誘導員引率下の園児の年齢別避難速度や多人数用ベビーカーを用いた際の搬送効率等、保育施設職員・園児集団が津波避難施設や高台まで避難する際の行動能力を把握し、保育施設の避難目的地の設定や支援体制の有効性の検証手法について研究を行うこととしている。 本研究では課題1として東日本大震災時における保育園児の津波避難に関する事例調査により、該当の保育施設における避難計画の設定状況、地震時の避難行動の態様とその有効性、課題2として南海トラフ巨大地震等に伴う津波襲来が想定される地域を対象とした事例調査により、現行の保育施設の避難計画の策定状況を把握し、課題3として以上の事例調査結果を踏まえ諸条件を統制した避難実験を積み重ね、津波避難施設や高台等まで避難する際の引率下の園児の年齢別避難速度や多人数用ベビーカー等介助用具を用いた場合の搬送効率を把握した上で、課題4として誘導者身体負担・配置状況別、園児集団構成別及び路面勾配での避難所要時間等、避難状況の予測モデルを開発し、保育園児の避難目的地の配置や支援体制の有効性を検討するための手法を構築することとしている。 これまで課題1については宮城県気仙沼市及び岩手県釜石市の保育施設を対象とした事例調査、課題2については兵庫県神戸市の保育施設を対象とした事例調査が行われた。現在、課題1~2に関する調査を継続・発展させると同時に、課題3~4に関する調査の実施に取り組んでいる状況にある。今後の対策を検討する上で、避難状況の予測モデルを開発することにより、避難目的地の設定の有効性の検証ツールとすることに本研究の意義があると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、課題1に関する東日本大震災時における避難状況例、及び、課題2に関する南海トラフ巨大地震等に備えた津波避難計画の策定状況に関する調査を実施した上で、課題3として調査結果に基づく諸条件別の避難実験を行い、今後、課題4とする保育園児の市街地避難モデル開発(平成29年度以降、課題1~3を継続・発展させると同時に)に必要な基礎データを整理することとしていた。 課題1については、これまで東日本大震災発生時において広域的な市街地津波避難を行った宮城県気仙沼市及び釜石市の保育施設の事例を取り上げ、聞き取り調査により園児の年齢別での避難誘導状況、また現地測定調査により避難経路上の水平・垂直移動距離を把握した。市街地では、独立歩行が可能な園児(2・3歳~5歳児)は担任等の引率の下で歩行させ、独立歩行が出来ない園児(0歳~1・2歳児)は職員が背負いや多人数用ベビーカー等を用いて搬送が行われる傾向が確認された。 課題2については、神戸市における保育施設の事例を取り上げ、南海トラフ巨大地震などに備えた津波避難計画の策定状況を把握した。 現在、課題3として、上記課題1~2による調査結果を踏まえ、路面勾配など諸条件を統制した実験環境を設けた避難実験や実際の保育施設の避難訓練の観測調査の実施に取り組んでいる状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題1(東日本大震災発生時における避難状況に関する事例調査)については、これまで調査が出来ていない地域において調査を継続・発展する予定である。 課題2(南海トラフ巨大地震などに備えた津波避難計画の策定状況に関する事例調査)については、今後津波の襲来が想定されている四国、和歌山県内などの保育施設を対象に、調査を継続・発展する予定である。 課題3(保育施設の市街地避難実験)については、上記課題1~2による調査結果を踏まえ、路面勾配など諸条件を統制した実験環境を設けた避難実験や実際の保育施設の避難訓練の観測調査を実施する予定である。具体的には、四国、和歌山県内などの沿岸部地域の避難経路や六甲山麓にある神戸大学キャンパス内外の様々な勾配の傾斜地を利用し、誘導員引率下の園児の年齢別歩行速度や多人数用ベビーカーの搬送効率等について、路面勾配・園児集団構成別等に避難実験条件を変更して測定する。 課題4(保育施設の市街地避難状況モデルの開発)については、上記課題1~3の成果を踏まえ、誘導員引率下の園児年齢別歩行や多人数用ベビーカー搬送避難による市街地での避難時間推計モデルを立案する予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究における課題3(保育施設の市街地避難実験)において、一部の実験で必要としていた実験機材(加速度・角速度センサー)が一時的に整備困難となり、翌年度に該当機材を整備の上実験を実施することとなったため、次年度使用額が生じた状況にある。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、次の費目に分けて使用する計画である。【物品】避難実験を行うにあたって、乳幼児搬送器具及び加速度・角速度センサーを整備するために要する。【旅費】南海トラフ巨大地震などに備えた現行の津波避難計画の策定状況例に関する事例調査の実施、保育施設の避難訓練の観測調査の実施、及び、学会大会等での成果発表に際する移動のために要する。【人件費・謝金】避難実験に際する被験者謝金のために要する。【その他】論文集への研究成果投稿料のために要する。
|