2017 Fiscal Year Research-status Report
社会発展の中での歴史的都市空間の保全-許容される変化の質と程度に着目して-
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16K18211
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
藤岡 麻理子 横浜市立大学, グローバル都市協力研究センター, 特任助教 (40724539)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市保全 / 歴史地区 / コミュニティ参加 / バンコク / チェンマイ / プーケット / 歴史的環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はタイの歴史的市街地の中から、保全の取組みが進んでいるチェンマイ、プーケット、バンコクを事例として取り上げ、現地調査を実施した。日本では歴史地区保全のための法制度として、文化財保護法による伝建地区制度があるが、タイでは、古記念物・古物・美術品・国立博物館法に基づく文化財保護行政が対象とするのは、考古学遺跡や仏教寺院等の単体の建造物のみであり、人々の暮らす歴史的な地域を一体的に保全する仕組みが存在しない。一方、昨年度の調査等を通して、タイでは、ボトムアップの取組みとして1990年代より旧市街保全の活動が行われており、それが現在では天然資源・環境省のプログラムともなり、全国的な動きになっていることが明らかになっている。そこで今回の調査では、タイの住民主導の都市保全の取組み最初のものであるプーケット旧市街の保全、および世界遺産登録を視野に入れつつ、創造都市の手法も用いながら進められているチェンマイ旧市街の保全について、インタビュー調査を行った。チェンマイではチェンマイ芸術文化センター所長、プーケットではコミュニティ組織の中心メンバーにヒアリングを行い、保全の取組みの背景、全体的方針、手法、関係主体の属性・役割・協働の状況、保全の対象、および観光との共存等を中心に話を伺うことができた。バンコクでは、旧市街において昨年度調査の補足調査を行い、地域の変化の様子、および王室財産管理局の修復方針が実現している様子を確認した。今後、調査結果をまとめ、論文として発表する準備を進めていきたい。 以上のほか、国際記念物遺跡会議総会に出席し、社会の中での文化遺産・都市遺産の位置づけや、複雑化する社会への文化・都市の側からの貢献のあり方等について、幅広い知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の調査結果を踏まえ、調査対象地をタイの歴史地区3カ所に設定し、順調に調査を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・最終年度となる平成30年度は、本研究目的を達成できるよう、これまでの調査結果およびその他都市保全に関するアジアにおける近年の動向も踏まえつつ対象地を設定し、現地調査を実施する。 ・事例調査で得られる知見を踏まえ、歴史的都市空間の保全に関する国際原則・理念の再検討を進める。合わせて、国や地域レベルでの原則・理念の収集を進める。 ・調査に基づく論文の執筆、投稿を精力的に行い、地域への還元を図る。
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Causes of Carryover |
・人件費、謝金が不要になったため。 ・調査旅費、翻訳・通訳等のための人件費・謝金等に充てる。
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