2016 Fiscal Year Research-status Report
近代化遺産の文化的景観としての価値評価に関する研究
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16K18219
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
麻生 美希 九州大学, 人間環境学研究院, 講師 (00649733)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近代化遺産 / 文化的景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献調査、専門家へのヒアリング調査により、文化財保護法と世界遺産の両側面か文化的景観の概念の整理を行い、近代化遺産の保存活用の課題の把握を行った。本研究では近代化遺産としてダム・発電施設・橋梁・大学校舎を挙げているが、近代化遺産には、産業遺産(一次、二次、三次産業)、インフラストラクチャー、戦争関連施設など多種多様な建造物を含む概念である。その遺産のカテゴリーや、産業の種別によって地域の歴史における位置付け、地域住民による価値の受容のしやすさが異なる。そのため、本研究で取り扱う近代化遺産のカテゴリーを改めて検証した。 本研究の目的は、施設・構造物に特化している近代化遺産を、面的な広がりを持って総合的に評価することである。そのためまずは、近代開拓事業によるインフラストラクチャーの整備、土地の利用、生活文化を総合的に調査可能な北海道美瑛町をフィールドとして加え、文化的景観として評価するための分析を行った。GISを用いた地理情報の一元化を行うことに加え、景観特性や生活文化の分析を行い、研究の進捗を奈良文化財研究所の主催する文化的景観研究会にて発表をした。 また、当初より研究対象として設定していた北海道平取町への資料収集・現地調査を行った。平取町は既に「アイヌの伝統と近代の開拓による沙流川流域の文化的景観」として価値付けされているが、アイヌ文化の聖地などを積極的に評価する一方で、文化的景観の名称にも記載されている近代開拓の、空間的・景観的な特性分析には課題が残ることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べた通り、近代化遺産のカテゴリーによって、地域の歴史における位置付け、地域住民による価値の受容のしやすさが異なる。近代化遺産の活用が進まない要因として、世界遺産に登録された明治日本の産業革命遺産のように強制連行・労働の歴史の有無が政治的な問題となったり、国威発揚の手段として使用されたり、地域にとって汚染、事故、労働争議などのネガティブな過去を包含する場合がある。岐阜県白川村においても、近代化は離村やダム建設に伴う集落水没などの歴史を伴っており、地域とは連続性を持っている遺産として積極的に評価できるか否か、難しい問題を孕む。したがって、研究対象の近代化遺産が文化的景観として評価できるか否かについて改めて検証する必要があった。そのため、現地調査などを次年度に延期することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、美瑛町を対象として、景観特性、及び文化的景観としての評価に関する研究をまとめ、査読論文を執筆する。また平取町を対象として、空間的な分析を行うための各種資料(特に近代化による変化が読み取れる開拓計画図、航空写真など)の入手を継続して行い、GISを用いた地理情報の一元化を行う。平取町では、比較的平坦地であるにもかかわらず、統一された殖民区画の影響が見えにくいことに着目し、アイヌのコタン(集落)の存在が道路や地割の形状にどのような影響を与えたのか、アイヌ文化期と近代開拓以降の空間の関係性を明らかにする。また、これは、アイヌ文化に影響を受けずに開拓が進んだ美瑛町との比較を行うことで、より相違点をはっきりさせることができる。 加えて、石炭採掘などの産業遺産に関しては、産業として衰退したことにより、現在の地域住民の産業・生活と断絶しており、文化的景観としての評価が困難な場合が多い。したがって、万田坑と関連する遺産群についての既往研究1)があり、市民活動(大牟田・荒尾炭鉱のまちファンクラブ)が活発な福岡県大牟田市・熊本県荒尾市の炭鉱関連遺産を調査対象として加え、文化的景観としての価値付け可能性の調査を実施する。
1)森永祐介、松本将一郎、八百板季穂、西山徳明:産業施設の近代化遺産としての現状と活用に関する研究ー万田坑とその関連遺産群を対象としてー, 日本建築学会九州支部研究報告 第49号, pp.381-384, 2010年
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に前述した通り、近代化遺産のカテゴリーによって、地域の歴史における位置付け、地域住民による価値の受容のしやすさが異なるため、研究対象の近代化遺産が文化的景観として評価できるか否かについて改めて検証する必要があった。そのため、現地調査などを次年度に延期することとし、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、現地踏査に重点を置き、北海道美瑛町、北海道平取町、福岡県大牟田市、熊本県荒尾市への調査を実施する。また、航空写真や地図データ等の必要資料の購入、査読論文の投稿、研究進捗の発表とともに、近代化遺産に詳しい専門家との意見交換なども行うなどし、予算を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)