2017 Fiscal Year Research-status Report
強磁性元素添加による結晶相制御を利用したHfO2基マルチフェロイック超薄膜の創生
Project/Area Number |
16K18231
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白石 貴久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50758399)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 強誘電性 / ドメイン構造 / 相転移温度 / ドーパント添加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、HfO2超薄膜に強誘電性と強磁性の両特性を付加することである。当該年度の研究計画は、添加元素種や濃度を変えた際の結晶構造の変化を調査し、強誘電性の起源である斜方晶相が発現する最適組成を探索することである。 まず、前年度で見出した最適な製膜条件を用いて、Fe添加量の異なるHfO2超薄膜を作製し、X線回折測定による詳細な結晶構造評価を行った。斜方晶相のみに起因した211回折ピークを観察することにより、Fe添加量が6mol%のHfO2超薄膜において211ピークの強度が最も強くなり、見積もられた斜方晶相の最大体積分率は45%であった。これより、Fe添加量は6mol%が最適組成であると分かった。また、強誘電体においてキュリー温度が何度に存在するかは重要なポイントである。そこで、高温X線回折測定を行うことでキュリー温度を探索した。温度の上昇に伴い211ピークの強度は減少し、500℃以上で消失したことから、キュリー温度は500℃であると予想された。これは、従来の強誘電体材料のキュリー温度と比較して同等以上であることから、非常に有望な材料であると言える。 次に、最適組成の膜に対して透過型電子顕微鏡観察を行うことで、斜方晶相がナノスケールのマルチドメイン構造を形成していることが分かった。また、分極軸が膜面内方向を向いたドメインで形成されていることも分かった。一方、Fe添加しない場合は強誘電性を示さない単斜晶相のみで構成されていたことから、Fe添加が斜方晶相発現に有効であることが明らかとなった。 以上より、Fe添加は強誘電性付加に有効なドーパントであることが分かった。他のドーパントとしてCoについて検証したが、スパッタターゲット作製時にCoが拡散してしまい、製膜に至っていないのが現状である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の計画では、強誘電性の起源である斜方晶相を発現させるための最適組成の探索である。斜方晶相由来の211ピークを観察することで、Fe添加の最適組成を明らかにし、相転移温度の観察にも成功している。また、ドメイン構造を観察することで、Fe添加の有効性も明らかにした。他のドーパントにおいてもセラミックスターゲットの作製さえ成功すれば、組成探索を実行可能であることから、おおむね順調に進展していると考えらえれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、次年度の研究計画に沿って研究を遂行する。前年度で明らかにした最適組成のFe添加HfO2超薄膜を用いて、強誘電体特性を明らかにする。また、強磁性特性の観察を行うことで、強誘電性と強磁性を両立しているのかを明らかにする。これより、マルチフェロイック材料としての可能性を検討する。 前年度の課題としては、一般的な固相反応法では添加元素の拡散によってセラミックスターゲットが作製できず、他の組成についての検討が十分に行えなかった点である。そこで、外注したセラミックスターゲットを使用して超薄膜を作製することで、CoおよびNi添加による強誘電性付加の可能性について検討する。
|
Causes of Carryover |
(理由) 原料粉末など一部の消耗品について、前年度で購入した残りと所属先で購入して頂いた分で足りたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 当該年度で消耗品類を使い切ったので、これらを次年度に購入する計画である。
|
Research Products
(4 results)