2017 Fiscal Year Research-status Report
高周期化ナノ構造薄膜のマルチフェロイック特性と光機能性材料への応用
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16K18234
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中嶋 聖介 静岡大学, 工学部, 助教 (40462709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ランダム亜鉛フェライト / PLD法 / ファラデー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、パルスレーザー堆積装置を用いて作製した亜鉛フェライト薄膜がサファイア基板上にc軸配向し、ターゲット組成の変化に対して結晶構造が変化することを明らかにした。そこで、本年度は各組成で作製した亜鉛フェライト薄膜の磁気光学ファラデー効果について詳細に調査を行った。最終目標であるチタン酸バリウム相との二相ナノ構造化に向けて、磁性相である亜鉛フェライトが高い磁気光学特性を示す最適な組成を調べる必要があることが理由である。組成を変化させた薄膜試料のファラデー回転角スペクトルの測定結果によると、3%亜鉛をリッチに設定した試料におけるファラデー効果が量論比組成の薄膜試料の回転角と同等である結果が得られた。亜鉛の組成比を増加すれば薄膜の透過性は向上することとなる。故に透過率を加味したファラデー効果の性能指数は亜鉛リッチの試料において向上することが明らかになった。次年度に取り組むチタン酸バリウムとの混晶化では、亜鉛組成を増加させた薄膜試料を用いることを指針として得ることができた。 一方、亜鉛フェライトの準安定相結晶を誘電体マトリクス中に分散させる形態の複合構造についても検討を行った。今回は亜鉛フェライトナノ結晶を液相法により作製し、シリカキセロゲル中に分散させ、超短パルスレーザー照射を行った。ナノ結晶を含まないゲルへの照射実験では、試料のファラデー回転角に変化はみられなかった。これに対して、亜鉛フェライトナノ結晶を含む試料では常磁性的な負の回転角が増加した。これは、超短パルスレーザー照射により亜鉛フェライトのランダムスピネル化が起こり、ナノ結晶中の実効磁気モーメントが増加したことが原因であると考えらえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学量論比から亜鉛と鉄の組成比を0~3%の間で変化させたターゲットを用いて、サファイア基板上に100nm程度の薄膜を堆積させた。得られた試料の磁気光学特性を評価するために、ファラデー回転角の波長分散スペクトル測定を行った。量論組成の試料ではランダムスピネル構造に基づく回転角のピークが380nm、及び480nmに観測された。一方、亜鉛を過剰とした組成の試料においても、同波長付近で同程度のファラデー回転角のピークを示した。特に3%過剰とした試料では、同波長域において透過率が低下するため、20%程度性能指数が向上した。しかしながら、亜鉛の組成を増加させるほど、X線回折より格子定数の大きな第2相が優先的に成長することがわかった。800℃の熱処理後では、薄膜のファラデー効果は完全に常磁性的に変化することから、本試料の高い磁気光学効果はマグネタイトなどフェリ磁性鉄酸化物の偏析によるものではなく、ランダムスピネル構造をもつ亜鉛フェライトのフェリ磁性が原因であると考えられる。このように、磁性元素の組成を減少させることでより高い性能指数を実現したことは、今後の本研究の進展に寄与する大きな成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、亜鉛過剰組成の試料において観測された第2相の同定を行う必要がある。続いて、亜鉛フェライトスピネル相と強誘電体物質であるチタン酸バリウム結晶相の同時配向成長を試みる。ペロブスカイト型構造をとるチタン酸バリウムと、スピネル型構造をもつ亜鉛フェライトは互いにヘテロ接合する必要があるがあるが、両者の格子には大きな不整合が存在する。そこで、基板へのレーザープロセシングを行うことで表面状態に周期構造をもたせることを検討している。また、亜鉛フェライトナノ微粒子をゾルゲル法により作製する誘電体マトリクス中に高濃度に分散させる手法についても取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が大きく残った件に関しては、購入検討中の装置の選定等が不十分であったため購入にいたらなかったことが原因である。速やかに選定を行い、予算の執行を行う予定である。また、次年度は国際会議において発表を予定する他、論文誌への投稿料についても計上する予定である。
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Research Products
(5 results)