2016 Fiscal Year Research-status Report
チタン/アモルファス炭素微細テクスチャーによる高骨形成能・骨接着性表面の創製
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16K18256
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稗田 純子 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40566717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チタン / アモルファス炭素 / 微細テクスチャー / 骨形成能 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工骨や人工関節等に生体用金属材料として使用されるTiには,生体骨との良好な接着性に加えて,早期治療のために高い骨形成能が求められる.本研究では,Ti表面に骨芽細胞との親和性が高いアモルファス炭素(a-C:H)膜のマイクロパターンを作製することで,材料表面での骨形成を促進し,かつ良好な骨との接着強度を有するTi/a-C:H複合表面の創製を目的とした.今年度は,純Ti基板上にプラズマCVD法によりa-C:Hを成膜してTi/a-C:H微細テクスチャーを作製し,擬似体液に浸漬することでハイドロキシアパタイトの析出状態を調査・検討した.原料ガスにC2H2あるいはCH4を用いて作製したテクスチャーの構造を比較した.C2H2から作製したa-C:H膜では,CH4を用いた場合と比較して,金属メッシュの下側に炭素原子が回り込み,マスキングした箇所にもa-C:H膜が形成し,Ti表面が露出しないことが分かった.また,線径の異なる金属メッシュを用いることにより,異なるパターンサイズを有するTi/a-C:H微細テクスチャーを作製した.Ti/a-C:H微細テクスチャーの骨形成能を向上させるため,アルカリ処理あるいはアルカリ加熱処理を行った.アルカリ処理では,10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に試料を60 ℃で1日間浸漬させた.アルカリ加熱処理では,さらに大気圧下で200 ℃,1時間の加熱を行った。アルカリ処理あるいはアルカリ加熱処理を行ったTi/a-C:H微細テクスチャーの骨形成能を評価するため,36.5 ℃で12日間,擬似体液への浸漬試験を行った.擬似体液への浸漬後,Ti上にのみハイドロキシアパタイトが析出し,a-C:H上には析出しないことが確認されたが,浸漬時間をさらに長くすると,横方向へのハイドロキシアパタイトの成長により,a-C:H膜表面も被覆されることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,異なるパターンサイズを有するTi/a-C:H微細テクスチャーの作製および擬似体液浸漬試験によるハイドロキシアパタイトの析出状態の調査・検討を行った.当初の予定では、細胞接着性タンパク質の吸着評価および細胞培養試験まで実施する予定であったが,Ti/a-C:H微細テクスチャーの作製条件の探索および擬似体液の調整・保存法の習得に予想以上に時間を要したため,当初の予定に対して進捗が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も前年度に引き続き,Ti/a-C:H微細テクスチャーにおいて,骨との親和性に優れるTiおよび細胞との親和性に優れるアモルファス炭素各領域の形状,サイズ,面積比により,骨形成能および骨接着強度がどのように変わるのかを調査し,良好な骨形成能および骨接着強度を示すテクスチャー構造を探索する.どのようなテクスチャー構造の時に,細胞接着性タンパク質が多く吸着するのか調査するために,細胞接着性タンパク質を添加した水溶液中に,Ti/a-C:H微細テクスチャーを一定期間浸漬する.細胞接着性タンパク質の吸着場所,吸着量および吸着速度を調査し,テクスチャーの各領域のサイズ,面積比との相関関係を明らかにする.次に,形状,サイズ,面積比の異なるTi/a-C:H微細テクスチャー上で骨芽細胞の培養を行い,骨芽細胞の接着場所,接着数および増殖率がどのように変わるのか調査する.骨芽細胞の接着性に優れたテクスチャー構造を持つTi/a-C:H微細テクスチャーの候補をラット大腿骨に一定期間埋入後,部位ごと摘出する.Ti/a-C:H微細テクスチャーと生体骨との界面観察による生体骨の接着性評価,引張およびせん断試験による生体骨との接着強度評価を行い,良好な骨接着強度を示すテクスチャー構造を明らかにする.さらに,アモルファス炭素膜の組成および化学的構造の最適化を目指す.細胞接着性タンパク質の吸着や骨芽細胞の接着および増殖には,材料の表面特性(表面エネルギー,表面電荷,表面官能基)が大きく関わる.水素含有量やsp2/sp3炭素比の異なるアモルファス炭素膜を作製し,それらの表面特性と細胞接着性タンパク質の吸着および骨芽細胞の接着挙動との相関関係を調査し,骨形成をより促進させるアモルファス炭素膜の組成および化学的構造を明らかにする.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,研究の進捗状況から当初計画していた細胞培養および動物実験を延期したために発生した未使用額である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた未使用額は平成29年度分予算と合わせて,プラズマCVD装置の部品やCH4等の可燃性ガスを使用するための安全設備の購入やチタン基板,試薬や実験器具等の購入費,共同利用の分析装置の使用費,細胞培養試験・動物実験を依頼するための費用,情報収集や打ち合わせ,学会での研究成果の発表のための出張旅費等として使用したい.
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