2016 Fiscal Year Research-status Report
超小型電源の実現に向けた腸管内微小階層構造を模した新規バイオ有機電子素子の開発
Project/Area Number |
16K18257
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
桑原 敬司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (50525574)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酵素電極 / バイオ燃料電池 / 導電性高分子 / 電解重合 / ポリチオフェン / 微小階層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,微小階層構造を付与した酵素電極の作製および単槽型バイオ燃料電池の基礎検討を行った。 (1) 繊維状構造を有する酵素電極の作製と評価:ポリチオフェン誘導体の電解重合条件(重合溶媒,重合電圧およびモノマー濃度)を検討し,これまで重合時の通過電荷量を大きくすることでのみ得られていた直径50-100 nmの繊維状構造が重合電圧を3.0 Vまで上昇させることにより短時間で形成できることがわかった。また,各条件で作製した膜を用いて酵素電極の性能評価から,繊維状構造の付与が酵素触媒電流を増大することがわかった。さらに超高分解能電界放射型電子顕微鏡による重合膜の観察により,これまで塊状であると認識していた構造体が直径20 nm程度のナノ繊維で形成されていることが新たにわかった。 (2) 単槽型バイオ燃料電池の基本情報の取得:微小階層構造を付与していない酵素電極を用いて単槽型バイオ燃料電池の構成の検討およびその性能評価を行った。燃料酸化極には果糖脱水素酵素を固定したポリアニリンもしくはポリチオフェン誘導体膜を用いた。いずれもナノ繊維状の微細構造を有しているが階層構造は形成していない。酸素還元極にはラッカーゼを固定した同様のポリチオフェン誘導体膜を用いた。これらの電極を用いて単槽型バイオ燃料電池の性能評価を行い,果糖を燃料として出力を得ることに成功した。また,得られた知見をもとに,次年度に作製を開始する計画であった電池セルの設計・作製を開始した。 (3) テンプレートを利用した多孔質電極の作製:電子顕微鏡観察の結果から,ポリスチレン球によるオパール状構造およびそれをテンプレートとしたポリチオフェン誘導体膜の多孔構造が形成できることを確認した。また,それを用いて酵素電極を作製し,酵素触媒電流が得られることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
使用する物品の入手時期の都合により,当初の計画とは着手する順序が異なってしまったものの,研究の効率的な進行を目指し,次年度に取り組む計画であった課題(単槽型バイオ燃料電池に関する基本情報の取得)を前倒しすることで,全体として滞りなく研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の主題となる微小階層構造の形成に関しては,一階層目の形成および電極として機能することを確認しており,引き続き細孔のサイズの調整と細孔サイズの影響を比較しやすい膜の形成条件を明らかにすることに取り組む。また,電子顕微鏡観察により得られた新たな知見から,階層構造の形成に当初計画していた二段階電解重合が必要ない(一段階で形成可能である)可能性が示唆されたため,本研究に適用可能であるか検討する。バイオ燃料電池の評価に係る基礎データはすでに取得済みであるため,酵素電極として性能が確認され次第,電池性能の評価を行い,微小階層構造の付与の効果について検討する。
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