2016 Fiscal Year Research-status Report
スピン状態と奇異な結晶方位依存性を利用した新しい磁歪材料の研究
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16K18262
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 桂輔 茨城工業高等専門学校, 自然科学科, 准教授 (10418212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁歪 / スピン状態 / 双晶変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電体において,双晶構造を利用した圧電定数の向上が研究されている.この手法は,双晶構造でありさえすれば外場の種類に依存しないはずである.申請者は,酸化物の磁性体La1-xSrxCoO3(x=0.2)を用いて,磁場においても同様に双晶構造を利用して磁歪特性の向上が出来る可能性を見いだした.他にも,磁場に対する形状記憶効果や超弾性に似た振る舞いを見いだした.これらの得意な磁性を示す要因として,磁気異方性の存在をほぼ単一ドメインな単結晶を用いて確認した. 単一ドメインの単結晶は, [111]c方向と垂直に試料を押さえ,[111]c方向に磁場を印加することにより得た.従来,単一ドメインは,1300℃以上のストレスアニールで得られていたが,磁場と応力を組み合わせても得られることが分かった.再現性の実験が必要である.試料をクランプした状態で,主軸に平行方向の磁化と垂直方向の磁化に大きな違いが見られた.磁気異方性定数を見積もると120kJ/m^3となり,磁気形状記憶合金Ni2MnGaの150kJ/m^3とほぼ同じであることが分かった. 磁歪応答の向上を目指して,LaCoO3とBiCoO3の固溶体および,LaCo3をLaCuO3の固溶体の育成を試みた.BiCoO3との固溶体では,化学溶液法により種々のカルボン酸を用いて多結晶の育成を試みた.その結果,試料内の一部が結晶になっていることを確認した.しかし,良質な結晶を得るのは難しいことが分かった.LaCuO3との固溶体では,組成相境界を見つけることができた. LaCoO3の強磁場中の磁化測定は,100 T以上での測定を試みた.従来考えていたよりも,さらに多くの状態が存在することが分かった.これらの状態は,低スピン状態と中間スピン状態が交互に並び超格子を組むことが考えられる.このようなスピン状態を利用した磁歪材料についても検討を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画では,平成28年度に,(1)La1-xSrxCoO3とLaCo1-xRhxO3の単結晶育成,(2)磁歪や磁気異方性の測定,(3)BiCoO3またはLaCuO3との多結晶固溶体の作製,(4)LaCoO3の強磁場中での磁化測定,を行う.(1)については,La1-xSrxCoO3(x=0.2)とLaCo1-xRhxO3(x=0.02)の育成が出来ている.Rh系の高濃度での育成に苦戦している.育成中の雰囲気や二度溶融といったことを検討している最中である.(2)については,La1-xSrxCoO3 の磁歪の結果に加えて,単一ドメインを用いた磁気異方性の測定に成功した.一方,LaCo1-xRhxO3 については測定が進んでいない.高濃度での育成が成功していないことが原因である.しかし,低濃度の単結晶でも兆候は測定できる可能性があるので,すでに育成できているx=0.02での測定を行う予定である.(3)の多結晶固溶体の作製は苦戦している.BiCoO3との固溶体は,計画していたクエン酸やn-ブチルアミンだけでなく,種々のカルボン酸で試みた.試料内で一部ペロブスカイトは出来てたが,不純物が多く,良質な結晶を得るに至っていない.一方,LaCuO3との固溶体の作製は成功し,組成相境界を明らかに出来た.(4)については,100 T以上の磁化測定ができ,さらに多彩なスピン状態の存在が明らかになった. 平成28年度の実施項目で若干の遅れが見られる.しかし,磁場中での単一ドメインの形成や磁気異方性の測定ができ,新たな知見を得ることができた.また,強磁場中の磁化から,LaCoO3において,さらに多様なスピン状態を明らかにできた.平成29年度には,育成できている単結晶で結果を積み上げ,高濃度の組成の単結晶育成に挑戦する.これより,「研究の目的」の達成度は「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,まず,LaCo1-xRhxCoO3のx=0.08以上の単結晶育成に再度挑戦する.平成28年度に,x=0.08およびx=0.20の単結晶育成を試みたが,溶融部から気泡が発生し,大型の単結晶を育成することができなかった.しかし,2度目の溶融で改善することがわかった.この手法を適用して,もう一度,単結晶の育成を試みる. 平成28年度に行う予定であったLaCo1-xRhxCoO3の磁歪測定は,まず既に単結晶が育成できているx=0.02で行う.強磁性の組成ではないので,大きな磁歪応答が期待できないかもしれないが,La1-xSrxCoO3との対比のために測定を行う.ただし,強磁性の組成で単結晶が育成できた場合には,そちらを優先する. 磁場中でのアニールで単一ドメインを得る手法についても,詳細に検討を行う.この手法を用いれば,温度を上げずに磁場の履歴を消去して,試料の形状を元に戻すことができるかもしれない.当初の研究計画には無い内容ではあるが,磁歪の特性をさらに活かす知見が得られる可能性がある. BiCoO3との固溶体は,様々な溶剤を用いて育成を試みたが,不純物が多い結晶しか得られなかった.そのような状況なので,さらに育成が困難な単結晶を得ることは,ほぼ無理だと思われる.代わりとして,研究計画に記載していたLaCuO3との固溶体に注力する.ただし,Coを置換することになるため,磁化は小さくなる可能性が高い.Laを希土類で置換する系についても検討したい.
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Causes of Carryover |
支給額を元に設備備品費や消耗品費の内訳を見直した.その結果,約4万円の次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Rh2O3やCoOなどの原材料費に使用する.
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Research Products
(1 results)