2016 Fiscal Year Research-status Report
組織制御に伴う バルク金属ガラスの力学的高機能化機構の解明
Project/Area Number |
16K18267
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
足立 望 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00758724)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 金属ガラス / 塑性変形 / 活性化体積 / 小角散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
脆性的な力学特性を示す金属ガラスは、塑性加工を施すことによって,延性を付与可能であることが,近年の研究で明らかになってきた。本研究では、塑性加工によって達成される金属ガラスの力学的高機能化メカニズムを、金属ガラス内部に存在する「β緩和領域」および「自由体積」を組織因子として捉えることによって解明することを目指す。 2年の研究期間の1年目であった本年は、研究計画に示した計画のうち、【A-2】および【B-2】が概ね終了し、【B-2】に着手している段階である。得られた実績の概要は以下の通りである. 【A-2】延性を付与した金属ガラスの塑性変形の律速過程を、引張試験により調査した。その結果、塑性変形のひずみ速度依存性から導出される活性化体積は、単原子から数原子程度の大きさであることが分かった。この値はナノインデンター試験によっても得られている。これは、金属ガラスの塑性変形が、単原子ジャンプ過程であるβ緩和によって担われていることを示唆おり、β緩和領域が延性を示す金属ガラスの組織として重要であることを示している。 【B-1】小角散乱法を用いて、延性を有する金属ガラスの組織を調査した。小角散乱強度の増大から、延性を有する金属ガラスは、不均一構造を有しており、この不均一構造の焼鈍に伴う消滅挙動は、β緩和挙動と対応していることが分かった。そのサイズは特定できなかったものの、μレベルのサイズで試料内に分布していることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度は【A-1】および【B-1】を実施予定であったが、【A-2】の進展が想定以上に早かったために、【A-2】を当初計画よりも前倒しで進めることで良好な実験結果を得ることが出来た。【B-1】については、海外施設ANSTOにおける実験が順調に進行し、計画通りに進めることが出来た.従って,計画の半分程を本年度で終えることが出来ており、順調に進行していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は,当初計画に示しているの【A-1】および【B-2】を実施する。【A-1】の金属ガラスの変形携帯の調査は、使用予定装置であるSEM、FIB、引張試験機等は申請者の現所属で使用可能な状況にあり,計画通りに実行可能な状況である.【B-2】については,TEM-EELSもしくは放射光施設などの大規模な実験設備が必要となるが、SPring-8での実験課題が採択されており、当初の計画通り実験を進める.以上の結果から、金属ガラスに発現する塑性変形機構を組織という観点から明らかにする。
|
Causes of Carryover |
交付決定後に,申請者の所属が急遽変更となり,その雇用形態が,他の研究プロジェクトで雇用される形態であったために,専任義務が生じ,当該研究費の使用が困難な状況となったために次年度使用額が生じることとなった.現在は,所属が再度変わり,当該研究費を使用出来る状態である.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画としては、すでに研究に必要な設備は揃っているため、基本的に変更は無く、当初の計画の通り巨大ひずみ加工に使用する消耗品や研磨用品に主に使用する。また、学会発表や実験のための国内・海外旅費としても利用する。
|
Research Products
(3 results)