2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18272
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神本 祐樹 名古屋大学, 未来社会創造機構, 准教授 (60582575)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リサイクル / タングステン / 溶融塩電解 / 水酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、切削用工具として用いられる超硬合金(炭化タグステン)からのタングステンの酸化侵出に及ぼす電解浴(溶融塩)の温度の影響について、タングステンとその他の元素(コバルト、タンタルなど)を検討し、各種構成金属の侵出メカニズムの解明と侵出メカニズムの選択性についての検討を行うことを目的とした。超硬合金中の各種元素の分離回収に関する影響を明らかにするめに平成29年では、平成28年度で観察された623Kよりも低い温度領域で生じた不動態形成に類似した電流変化(ピーク)について実験的検討を加えた。573Kの電解浴温度条件下でタングステンをアノードとして定電位電解を行ったところ、不動態を形成したと思われる電位ではアノード表面にタングステン酸化合物と思われる白色の析出物が確認され、電流が短時間で流れなくなった。酸化生成物としてタングステン酸イオンが生成するため、タングステン酸ナトリウムを添加してアノード分極曲線を測定した。タングステン酸ナトリウムの添加に伴ってアノード分極曲線のピーク後の電流が低くなる傾向が示された。そのため、タングステンの侵出に伴って生成するタングステン酸イオンが電極近傍に蓄積することで電解を阻害することが示唆される。本研究で当初想定していた電解に伴ってアノードで生成する酸素ガスがタングステン等の酸化侵出に直接的に影響を及ぼす可能性は低いといえる。これらのことから、電極近傍の電解生成物の拡散処理を行うことで電解浴温度が低い場合でも電解は可能といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的では、低温領域での酸化タングステン等の酸化侵出メカニズムに及ぼす影響について実験的に明らかにすることを目的とした。当初はアノードで生成する酸素ガスが酸化侵出に寄与していると予想していたが、アノード近傍での酸化生成物の拡散が電解を律速させていることがタングステンの酸化実験の結果から明らかになった。そのため、当初の想定した酸化侵出メカニズムと異なるが、主たる対象元素であるタングステンの酸化侵出メカニズムを解明したことからおおむね順調に研究は進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
タングステンと同様の酸化侵出メカニズムによってコバルトやタンタルなどの元素が侵出されているかを実験的に検討する。これらの各金属の結果を基にそれらの合金である超硬合金の低温領域(573K付近の)酸化挙動の検討を行う。
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Causes of Carryover |
2016年度退職の教員から譲渡を受けた実験物品を使用したため、物品費が申請よりも多くなった。 当初予定していた国際会議が延期となったため、旅費が申請よりも低くなった。
執筆中の論文の校正ならびに投稿料、国際会議での発表などの成果発表を積極的に進め、経費の適切な執行を進める。
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