2016 Fiscal Year Research-status Report
アルカリ処理を軸とした木質バイオマス各成分からの有価物製造リファイナリー技術開発
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16K18285
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村中 陽介 京都大学, 工学研究科, 助教 (40756243)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 木質バイオマス / マイクロリアクター / 成分分離 / アルカリ処理 / ヒドロキシメチルフルフラール / 乳酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画で掲げた検討工程に基づき、以下について試みた。 微小流路中での単糖からのHMFの製造では、グルコース、フルクトース水溶液を原料とし、安価かつ分離の容易なCO2を酸として利用した高温・高圧反応を検討した。種々の検討の結果、HMFを高収率で合成するためには200℃付近の高温かつ1 h程度の滞留時間が必要であることを明らかにした。一方で高温においては副生成物が多く生じるため、抽出剤を用いHMFを反応場から抽出し、過分解を抑制する必要性があるとわかった。これを基に、CO2を酸のみではなく抽出剤としての効果も期待した超臨界CO2として利用した。結果、フルクトースから40 min、200℃で48.8%、グルコースからは60 min、210℃で32.9%のHMF収率を達成した。 木質バイオマスからの酸素雰囲気下アルカリ処理でのリグニン溶解では、常圧空気雰囲気下でスギを10wt% NaOH水溶液で180℃処理することにより概ねリグニンが溶解したのに対し、加圧酸素雰囲気下では、セルロース由来の有機酸収率は向上したもののリグニン溶解率は低下した。これは、アルカリ性水溶液中で解離したフェノール性水酸基と分子状酸素によりキノンメチド構造が形成し、リグニン間縮合を起こしたためと考えられ、酸素の不用意な添加はリグニン溶解を抑制することが明らかになった。 セルロースからのアルカリ処理による乳酸製造では五炭糖あるいは六炭糖から成る単糖、二糖、多糖を原料としアルカリ処理することによりそれぞれの生成有機酸から分解経路を考察し、乳酸を得るために適した原料やプロセスを考案した。原料木材に対しては高濃度アルカリの処理が有効であったのに対し、熱水処理後残渣に対しては低濃度アルカリ処理が有利であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖類からのHMFの合成では水とCO2以外の環境に有害な試薬を利用せずに簡便な手法で高いHMF収率を達成した。これは当初の予定であるヘミセルロースからのフルフラールの製造にも適用可能な手法であると考えられ、非常に大きな進展である。 酸素雰囲気下アルカリ処理に関しては、酸素の混入がリグニン分解を抑制することが示唆された。一方で、キノン化合物を外部から微小量添加した際は酸素の混入による溶解率が向上するという知見も得ており、これは今後の方針として大いに役立つ。 セルロースからの乳酸製造では既に高い収率を達成する条件も見出しており学会発表も行った。こちらは今後前工程より得られる試料を原料として適用し検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はバイオマスの熱水処理と、得られた残渣からのリグニン抽出を中心に実験を行う。また抽出リグニンに関してもこれまでの知見を基に処理し、有価物の回収を狙う。
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Causes of Carryover |
研究を進めるに当たり不可欠である元素分析装置の不調により、新規の物の購入を考慮したが、非常に高価であり、分担者として助成を受けている科研費・基盤Aとの共用設備としての購入を考慮したため。これに伴い初年度は極力既設の装置・設備での実験を推進した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額1,467,383円の内1,000,000円を基盤Aとの共用設備(元素分析装置)の購入に使用する。初期は使用に伴う消耗品も必要となるため、残り分により充填する。
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