2016 Fiscal Year Research-status Report
実触媒活性ドメインを3次元的に可視化するイメージングXAFSの開発と応用
Project/Area Number |
16K18288
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松井 公佑 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (90754309)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 固体触媒 / 固体高分子形燃料電池 / XAFS / 顕微分光 / X線イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、X線イメージング法とXAFS分光を組み合わせた解析技術を利用し、材料内に局在した触媒反応・劣化メカニズムの解明を目指している。平成28年度は以下の課題について取り組んだ。 (1) 酸化鉄のマイクロ構造体における不均一な結晶相分布の可視化 イメージングXAFS法で十分に可視化が可能な、ミクロン大の鉄酸化物の樹状粒子を合成した。この粒子は、結晶の成長方向が厳密制御されており、単一の表面構造・化学状態を有する。したがって、このような構造が規定された粒子上での化学反応・構造相転移・磁気構造を議論できれば、機能が発現されている活性構造の理解に繋げることができる。本研究では、合成した樹状酸化鉄粒子に関し、Fe2+/3+から成る立方構造のFe3O4相、それを低温酸化することで得られるFe3+の立方構造であるγ-Fe2O3相、さらに高温での加熱により得られる六方晶のα-Fe2O3相におけるレドックス反応、及び結晶相転移を検討した。さらに、X線を100 nm級に集光させ、試料内で2次元走査しながらFe K端XANES (X吸収端近傍構造) スペクトルを得て、粒子内の化学状態、結晶相分布の2次元可視化を行った。これらの検討により、結晶内でのレドックス反応部位や、結晶相転移時に相分離が誘発される部位の特定に成功した。 (2) 固体高分子形燃料電池における3次元CT-XAFS法の開発 上述の2次元イメージングXAFS法は、試料の深さ方向に投影された2次元情報が得られる。そこで本研究では、新たに3次元イメージングXAFS法の開発を進め、コンピューター断層撮影法 (CT) とXAFS分光法を組み合わせた、3D-CT-XAFS法の開発・高度化を進めた。固体高分子型燃料電池のその場計測に応用させ、カソード電極触媒の劣化過程におけるPt触媒の分布とその化学状態の3次元可視化を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年の交付申請書に基づいて、計画的に研究を実施している。 概要(1)の成果については、いくつかの条件での反応後における粒子内の結晶相イメージングに成功し、検討した反応条件の詳細な評価ができ次第、原著論文の投稿を進める。 概要(2)の成果については、一通りのデータ取得が完了し、解析法も確立できたことから、H29年4月に原著論文の投稿を完了させた。また、今年度に実施予定である、合金試料における3次元の元素可視化や、EXAFS解析データの3次元可視化技術の構築についても、テストデータ等を利用して、最適な実験条件の検討や解析ルーチンの確立を進めており、本実験に向けた準備も順調に進んでいる状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、X線分光データをイメージ化し、目に見える形で提供できるようになったが、膨大なイメージングデータから必要情報を抽出し、材料の特性や寿命を予測できるようになるためには、コンピューターサイエンスの導入が必須であり、機械学習やディープラーニングによるデータ統計・処理が必要である。計測技術の高度化と平行して、マテリアルズインフォマティクスの研究者との連携を模索していきたい。
|
Research Products
(11 results)