2016 Fiscal Year Research-status Report
多元系ナノ金属超微粒子の精密制御と新奇均一分散型担持触媒の設計
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16K18290
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷屋 啓太 神戸大学, 工学研究科, 助教 (30632822)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多元系ナノ粒子 / カルボン酸 / 水素化 / ポリオール法 / 合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、再生可能資源からの化学製品の生産が求められており、不均一触媒による天然に豊富に存在するカルボン酸からアルコールへの直接水素化プロセスを構築することは、持続可能な社会の構築に一役を担えると考えられる。その触媒には複数種の金属からなる多元系金属触媒が用いられることが多いが、担持金属と担体との相互作用により複数種の金属サイトが発現し、真の活性サイトの同定が困難となっている。結果、高活性触媒の設計指針が構築されていない。本課題申請では、担体の存在しない多元系金属ナノ粒子に関して金属組成や構造の精密制御を行い、カルボン酸の水素化に理想的な活性点構造の指針を構築すること、また、そのナノ粒子の機能が最大限に発揮できる触媒環境場の構築を目的としている。 平成28年度は、Pt、RuおよびSnを用いてPt-SnおよびRu-Sn 2元系ナノ粒子(PtSn NPsおよびRuSn NPs)およびPt-Ru-Sn 3元系ナノ粒子(PtRuSn NPs)の調製を同時還元法により試みた。ナノ粒子はポリオール法により260 ℃で調製した。また、ポリオール法で調製する際の導入金属組成および粒子安定化剤の量を変化させることで、ナノ粒子中の金属組成や構造および粒子径の制御を行った。 1. PtSn NPsにおいてはSn導入量を変化させることで、Pt3Sn1合金and/or Pt1Sn1合金相を有するナノ粒子を調製できた。一方で、RuSn NPsにおいては、Ru metalとSnO2が形成し、現行法ではRuとSnでは合金を形成できないことが明らかとなった。PtRuSn NPsでは、PtとSnO2の形成が確認された。Ruの添加により、PtとSnの合金形成にも影響を与える可能性が示唆された。 2. Pt3Sn1合金が形成するSn/Pt=0.2のPtSn NPsにおいて、安定化剤量を2倍に増加することで、合金相は保持したまま結晶子径が18 nmから13 nmまで低下した。合金相を有するナノ粒子においても安定化剤の量で粒子径を制御できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた3種金属の同時還元によるポリオール法では3種金属の混合が行えず、それぞれの金属が単独でナノ粒子を形成することがわかった。この可能性は考えられていたので、PtSn NPsおよびRuSn NPsを調製した後で残る1種を逐次的に添加する方法により混合性の向上を図るため、それぞれの2元系ナノ粒子触媒の調製に着手した。その結果、PtSn NPsでは合金相を有するナノ粒子を形成できることが明らかとなった。一方で、RuSn NPsではRuとSnの合金は形成せず、それぞれの金属が分離したナノ粒子が形成されることが明らかとなった。これらの結果から、Ruを含む場合に混合性が低くなることが明らかとなったが、予定していた3種金属の組成比と混合性の評価に達していない。一方で、PtSn NPsの合金形成には成功し、さらにRuを逐次的に還元する方法で調製したRu/PtSn NPsでは酢酸の水素化活性の向上が確認された。また、次年度に予定していた安定化剤濃度と粒子径の評価をPtSn NPsに関して着手し、粒子径制御の可能性を見出した。これらのことから、初年度の成果としてはやや遅れている状況であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
PtRuSn NPsの調製を行うために同時還元法から逐次還元法への変更が必要となる。PtSn NPsの合成はすでに成功しているため、このPtSn NPsにRuを逐次的に還元添加する手法を詳細に検討する予定である。PtSn NPsに関して、すでに合成されているPt3Sn1合金およびPt1Sn1合金だけでなく、さらにSn量の多いPt1Sn2合金を有するナノ粒子の合成も試み、それぞれのナノ粒子にRuを添加することで、3種金属の組成とカルボン酸の水素化性能を詳細に検討する予定である。平成28年度に得られた知見から、現行法ではRuの還元性が他の2種金属に比べて低い可能性が高い。ポリオール法による逐次還元時の還元剤の種類や量、調製温度などの最適化の詳細な検討が必要となる。 当初の予定では3元系金属ナノ粒子について、安定化剤の濃度がナノ粒子の粒子径に与える影響を検討する予定であったが、逐次還元法によるRu/PtSn NPsの調製に計画変更するため、粒子径の制御は母体となるPtSn NPsに関して検討する。現行触媒においては、PtとSnの合金も反応活性に寄与することが示唆されているが、詳細は明らかになっていない。このため、PtSn NPsの合金構造と粒子径を精密制御することで、カルボン酸の水素化に有効な活性点について有意義な知見が得られるものと考えられる。
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Research Products
(5 results)