2016 Fiscal Year Research-status Report
バイオマス由来アクリル酸のワンステップ高効率合成を実現する新規触媒の機能設計
Project/Area Number |
16K18294
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
小俣 香織 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50734133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アクリル酸 / グリセロール / アクロレイン / バイオマス / 固体酸 / タングステン / ニオブ / バナジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的に需要が高まっている超吸水性ポリマーの製造には、アクリル酸が必要不可欠である。グリセロールから脱水反応と酸化反応のツーステップで合成されるアクリル酸をワンステップで合成するための反応機構を学術的に解明し、新しい複合酸化物触媒を開発することにより、アクリル酸の高効率合成技術を構築することが本研究の目的である。 この目的を達成するために、本年度は独自に開発したリン酸添加W-V-Nb-O触媒について「①リン酸添加W-V-Nb-O触媒の結晶構造および表面物性の解析」「②反応過程に与えるリン酸の影響の解明」を目指して研究を実施した。 ①では、リン酸がW-V-Nb-Oの結晶構造と表面物性に及ぼす影響について調査した。含浸法でリン酸を添加した場合、W-V-Nb-Oの結晶構造の変化は見られなかったが、リン酸の添加量を一定以上に増加させると凝集による比表面積の低下が起こることが明らかになった。一方、触媒表面の物性はリン酸の添加によって大きく変化した。アクリル酸合成反応の第1ステップ(グリセロールの脱水)に有効なブレンステッド酸がリン酸の添加によって増大し、特に水蒸気存在条件下では副反応を引き起こすとされるルイス酸がほとんど見られなくなった。 ②では、リン酸がアクリル酸合成反応のどの過程にどのような影響を及ぼしているのかを調査した。まず、Vを含まないW-Nb-Oにリン酸を添加した触媒を調製し、リン酸が第1ステップのグリセロール脱水過程に及ぼす影響を調べた。その結果、2.5~5.0wt.%のリン酸添加により、アクリル酸合成の中間体であるアクロレインの選択率が向上することがわかった。 ①、②の検討により、W-V-Nb-O表面へのリン酸の添加はグリセロール脱水反応の活性点となるブレンステッド酸の割合を増大させ、アクリル酸合成の中間体であるアクロレインの選択率を向上させることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに進行し、リン酸がターゲットとする反応の第1ステップであるグリセロールの脱水反応に及ぼす影響を明らかにした。これを踏まえて今後は、リン酸が第2ステップであるアクロレインの酸化反応に及ぼす影響について重点的に調査する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、「①リン酸添加W-V-Nb-O触媒の結晶構造および表面物性の解析」、「②反応過程に与えるリン酸の影響の解明」を目指して研究を実施し、リン酸がターゲットとする反応の第1ステップであるグリセロールの脱水反応に及ぼす影響を明らかにした。これを踏まえて今後は、リン酸が第2ステップであるアクロレインの酸化反応に及ぼす影響について重点的に調査する予定である。具体的には、酸化反応の活性サイトと考えられるVの価数についてESRやXPSを用いてリン酸添加前後の変化を解析する。これらの結果を、アクロレインを出発原料とした酸化反応の結果と照らし合わせ、リン酸の効果と本反応に適したVの状態を明らかにする。 また、①、②で得られえた反応に適した表面状態、構成元素の価数などの知見に基づいて「③リン酸あるいはリンの添加方法の検討および最適組成の解明」を行う。これまでに検討した含浸法によるリン酸の添加に加え、W-V-Nb-O複合酸化物の調製過程でリン酸(あるいはその他のリン化合物)の添加を試みる。さらに、開発した触媒の機能を十分に引き出すため「④合成反応を支配するパラメータの最適条件の解明」を行う。具体的には、反応物質と触媒との接触時間、雰囲気中の酸素濃度、反応温度など、各ステップの反応を支配するパラメータを明らかにし、一つの触媒上でツーステップの反応を高効率で進行できる最適条件を明らかにし、アクリル酸収率の向上を目指す。
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