2017 Fiscal Year Research-status Report
エコ炭素循環に向けた酵素潜在能力を最大限に活かす太陽光応答型酵素活性化デザイン
Project/Area Number |
16K18296
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中澤 光 東北大学, 工学研究科, 助教 (40584991)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酵素 / 光応答デバイス / 星形ナノ粒子 / セルラーゼ / セルロソーム / セルラーゼ / タンパク質の安定性 / 粒子合成の安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、化石資源から代替資源へ転換が急務となっている。難分解かつ難溶解性固形物であるセルロース系バイオマスを用いる場合、分解酵素コストが嵩むため、厳密にコスト管理された工程で行うことが必要であり、酵素反応にボイラー熱源を使わない酵素反応環境が求められる。本研究では、太陽光(自然光)を熱に変換する性質を持つ星形金ナノ粒子へ、我々が開発した酵素クラスター化設計を反映させ、太陽光応答的に局所反応温度向上させることによる酵素活性化を利用したボイラーを必要としないエコ炭素循環システム指向酵素デザインを提案した。すでに前年度末までに目的の光応答デバイスが完成し、大幅な進展が見られたため、当該年度はさらなる進展を期待したが、結果として酵素の光応答活性化効果は安定して見られたものの、粒子への酵素提示による酵素活性化効果(クラスター化効果)に関しては、活性化が観察できない時もあり、安定した効果を示さなかった。そのため、当初計画に入れていた他の酵素への適用や酵素の耐熱化を取りやめ、不安定な活性化の原因究明と解決策の発見に焦点を絞った。実験を重ねるにつれて最適酵素提示量が存在するということが明らかとなった。星形金ナノ粒子を安定した表面積で合成することができてないことが一つの原因と考えられたため、混ぜ合わせの条件を変更し、最終的に金イオンを水に薄めたのちに攪拌しながらHEPES緩衝液に入れることで安定した表面積の星形金ナノ粒子を合成を成功させた。次に粒子当たりの提示酵素の量を評価したところ、酵素量が少ないと酵素が失活することが明らかとなった。酵素側面や触媒中心が粒子表面に吸着することによって失活することが想定されたことから、酵素提示量を最適化することあるいは牛血清アルブミンなどの吸着タンパク質をブロッキング剤として使うことを試みたところ解決できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、星形金ナノ粒子の合成および粒子への酵素提示に関しても順調に進み想定通りの結果が得られたため論文化および作製した光応答デバイスのさらなる機能強化へ進む予定で考えていたが、何度も実験を重ねるにつれ、再現性が悪いということが分かった。稀ではあるが、全く活性が出ないこともあったため、このまま論文化をすることは間違った結果を世に出してしまう可能性があると考え、取りやめた。当該年度は、ほかの酵素への応用や酵素の耐熱化を当初計画に入れていたが、こちらも取りやめ、不安定な活性化の原因究明と解決策の発見に焦点を絞った。本年度を費やして再現実験を重ねたことから自信をもって論文化ができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年こそ現在の結果で学術論文に投稿し成果を公開する。 また、金ナノ粒子では70℃程度までの活性の向上にとどまったことから耐熱性酵素(最適温度110℃)のポテンシャルは完全には引き出せていない。そこで、さらに高波長を吸収できることから高温になることが期待されるカーボンナノチューブや、金ナノロッドを用いて耐熱酵素の最適な温度を達成できる粒子を開発する。しかしながら高温になりすぎる可能性があることから難易度はかなり高いことから、様々な形状を試す必要がある。予算のある限りで検討する。また、本研究の意義からすると界面活性剤などの添加なしに粒子を合成する新規手法の開発に着手する必要がある。これに関しては文献調査から有望なものが見つかれば試みる。
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Causes of Carryover |
再実験の結果、星形粒子上で酵素活性が安定しない場合がたびたび見られた。予定を変更し、酵素及び粒子の物性を調査したところ、予想に反して粒子がわずかでも大きいと直ちに酵素を不活性化することが明らかとなった。研究遂行上、金属粒子表面での酵素の失活の本質を見極めることが不可欠であることから、少なくとも酵素活性と粒径の関連を調べる詳細な条件検討実験を追加実施する必要が生じた。
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Research Products
(9 results)