2016 Fiscal Year Research-status Report
人工細胞膜の再生医療への応用に向けた腫瘍原性肝幹細胞の選択的排除機構の解明
Project/Area Number |
16K18304
|
Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
古水 雄志 崇城大学, 生物生命学部, 助教 (80735829)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 再生医療 / 形質転換 / がん化 / 肝幹細胞 / 肝芽細胞 / リポソーム / 人工細胞膜 / 選択的排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療では、幹細胞を生体外で増殖させた後に、細胞移植法により治療を行うことが考えられているが、もし形質転換を引き起こした細胞が混入した場合、 細胞移植した後に、生体内で異常増殖してがん化するリスクがある。これを未然に防ぐためには、移植前の形質転換幹細胞の選択的排除方法の開発が必要である。そこで、本研究課題ではこれまで申請者らが行ってきた“ハイブリッドリポソーム(HL)を用いたがん治療への応用に関する知見”と“肝幹細胞の誘導法”とを組み合わせた「HLを用いた形質転換肝幹細胞の除去法」の医用工学的応用に関する知見を得、これをiPS細胞等に応用するものである。 H28年度は、肝幹細胞の一種である肝芽細胞を用い、HL(DMPC/10mol%C12(EO)23)による形質転換幹細胞の除去効果について、下記の成果を得ることができた。 1)悪性形質転換マーカー(Ki67)に関し、HLを1mMで48時間処理したところ、未処理の細胞と比べてKi67の低下が示され、悪性形質転換細胞の排除が示唆された。 2) in vitro腫瘍原性試験により、HLを1mMで48時間処理することで、1mM SB処理で誘導されたコロニー形成を完全に抑えることが明らかになった。 3) HL処理後の継代による腫瘍原性への影響について、HLを1mMで48時間処理し、さらに再度48時間培養した結果、未処理の細胞と比べ、コロニー形成がほぼ完全に抑制されることが明らかになった。 以上のことより、HLがSB処理により誘導される形質転換肝幹細胞を排除することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、肝幹細胞の一種である肝芽細胞を用い、HL(DMPC/10mol%C12(EO)23)による形質転換幹細胞の除去効果について、下記の成果を得ることができた。 1)形質転換細胞の同定に Ki67(異常増殖の指標)をマーカーとして用い、8日間酪酸ナトリウム(SB)処理することで陽性を示す割合が 18%まで上昇した。さらに HL を処理したところ、Ki67陽性細胞が3%まで低下し、Ki67が悪性形質転換マーカーとしての可能性が示唆された。 2) HL処理条件について、DMPC濃度が1mMで48時間処理することで、1mMSB処理で誘導されたコロニー形成数を完全に抑えることが明らかになった。 3) 今後、実際の再生医療への応用を目指した場合、HLにより形質転換細胞を除去した後、移植に必要な細胞数を確保するため、再度細胞を培養することが想定される。 そこで、HLで48時間前処理した後、SB存在下で、肝芽細胞を再度48時間培養した結果、HL前処理によりコロニー形成数をほぼ完全に抑えることが明らかになった。 本研究により、HLの処理条件が最適化されたことにより、HLがSB処理により誘導される形質転換肝幹細胞を排除することが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、HLの再生医療への応用に向けた腫瘍原性肝幹細胞の選択的排除機構の解明を目指して、下記の点について、研究を進めていく。 1)HL処理後のEpCAM以外の肝芽細胞マーカーを用いた細胞集団の解析。 2)HL処理した肝芽細胞を三次元培養した後、薬物代謝酵素活性(CYP3A4等)を測定する。 3)HLの細胞膜融合について、HLを蛍光脂質でラベル化し、肝芽細胞に対する蛍光蓄積についてフローサイトメトリー解析を行う。 4)SBで誘導された形質転換細胞の免疫不全マウスを用いたin vivoにおける腫瘍形成試験を行う。また、HL処理後の腫瘍形成抑制試験を行う。
|
Causes of Carryover |
熊本地震の影響により、研究開始がやや遅れたため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の未使用額は、学会のための旅費に充てる。
|
Research Products
(13 results)