2016 Fiscal Year Research-status Report
局部荷重の影響を考慮した縦曲げ最終強度推定法の確立に向けた研究・開発
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16K18321
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辰巳 晃 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60736487)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 縦曲げ逐次崩壊 / 縦曲げ最終強度 / 船底局部荷重 / 船底外板での座屈の加速 / 内定板の有効性の低下 / 拡張Smith法 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般にコンテナ船の船体中央部では,水圧による鉛直上向きの荷重がコンテナ重量による鉛直下向きの荷重よりも大きくなる.そのため,水密隔壁間の二重底は,全体として鉛直上向きに凸となる形状に曲げられる.この二重底の局部曲げ変形により,船体全体のホギング状態での縦曲げ最終強度が低下すると知られている. 本研究では,二重底に水圧やコンテナ重量などの局部荷重が働く状態のコンテナ船を対象に非線形有限要素法を用いて縦曲げ崩壊解析を行った.コンテナ船の1/2+1+1/2ホールド範囲をシェル要素でモデル化し,所定の局部荷重を初めに与え,その荷重を一定に保った状態でモデルの前後端にホギング方向の回転角を与え,その崩壊挙動を調査した.その結果,縦曲げ最終強度の低下をもたらす要因が大きく2つあることを明らかにした.1つ目の要因は,二重底の局部曲げ変形により船底外板が初期的に圧縮され,船底外板の座屈・塑性化が助長されることである.2つ目の要因は,船底外板の座屈・塑性崩壊にともない二重底の局部曲げ変形が急激に成長し,局部曲げ変形の引張側にある内底板において圧縮応力が除荷することである.圧縮応力が除荷する間,内底板はホギング強度に寄与しないため,この挙動を内底板のホギング曲げに対する有効性の低下と呼称する. 上述の解析から得られた知見に基づき,局部荷重の影響を考慮できる実用的な縦曲げ逐次崩壊解析法を開発した.開発した手法は純曲げ状態での逐次崩壊解析に広く用いられるSmith法の拡張版と位置付けられるため,拡張Smith法と名付けた.拡張Smith法では二重底を平面格子梁で,船側部を1つの梁で表し,両者を水密隔壁位置で剛体結合した1ホールド範囲の解析モデルを用いる.拡張Smith法による解析結果を非線形有限要素解析の結果と比較し,拡張Smith法が縦曲げ最終強度および崩壊挙動を精度よく推定することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形有限要素解析によって船底に局部荷重が働く場合の船体の縦曲げ崩壊挙動を解析した.その結果,船底の局部荷重が縦曲げ最終強度の低下をもたらす主要因を明らかにした.また,それらの主要因を考慮できる実用的縦曲げ逐次崩壊解析法である拡張Smith法を開発した.これは,本研究課題交付申請書の平成28年度の研究実施計画に記した ①FEMによる局部荷重作用下における縦曲げ崩壊挙動の調査 と ②縦曲げ最終強度を推定する実用的数値計算法の開発 を実施したことに相当する.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると言える. なお,当初(研究計画調書の段階)の研究計画ではポアソン効果の影響を考慮するため,拡張Smith法において二重底を平面格子梁を膜要素で挟んだモデルに置き換えることを計画した.しかし,膜要素を用いずに平面格子梁のみで二重底を置き換えるモデルでも,縦曲げ崩壊挙動および縦曲げ最終強度を精度よく推定した.よって,開発した拡張Smith法では膜要素を考慮していない.
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Strategy for Future Research Activity |
開発した拡張Smith法は8,000TEU(Twenty-foot Equivalent Unit)の輸送能力を有するコンテナ船1隻にしか適用していない.今後,ホールドのサイズや横断面を構成する部材の形状など,構造様式の異なるより大型の船を解析対象に採り上げ,非線形FEMおよび拡張Smith法によって縦曲げ逐次崩壊解析を実施する.それらの結果を比較することで拡張Smith法の推定精度についてさらなる検証を行う. また,非線形FEMによる縦曲げ崩壊解析の結果から,複合荷重下の防撓パネルの崩壊挙動に対して,フロアーやガーダーなどの桁材の挙動が大きく影響すると分かった.桁材との相互影響を考慮した複合荷重下での防撓パネルの崩壊解析を行い,その影響度を明らかにする. 平成28年度に実施した解析の結果および上述の内容を含む平成29年度に実施する解析の結果を整理し,局部荷重の作用下における船体の縦曲げ最終強度を決定する要因を明らかにする.その主要因が明らかとなれば,局部荷重の作用下における船体の縦曲げ最終強度を簡便に推定できる算式の開発を平成29年度中に開始する.
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Causes of Carryover |
平成28年度に受領した交付金はおおむね計画通りに使用しており,発生した次年度使用額は僅かである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に物品費として支出する予定である.
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