2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18330
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
芳賀 一寿 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (10588461)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レアアース / 硫酸浸出 / 溶媒抽出 / シュウ酸沈殿 / アパタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
レアアースを含む天然のアパタイト鉱石を対象に、硫酸を用いたレアアースの浸出挙動を調査した。具体的な浸出条件としては、硫酸濃度0.1~6 mol/L、浸出温度20~80℃、浸出時間30~360 min、パルプ(固体)濃度 1~2%での浸出を行い、各種浸出条件がレアアースの浸出挙動に与える影響を調査した。 硫酸濃度の影響を調査した結果、0.1 mol/Lではレアアース浸出率は10%以下だったものの、1 mol/Lの硫酸を用いることで、浸出率は90%以上まで上昇した。しかしながら、硫酸濃度の上昇に伴いレアアースの浸出率は減少し、6 mol/Lの硫酸を用いると浸出率は20%となった。各硫酸濃度の浸出から得られた残渣をXRDで解析した結果、1 mol/Lの硫酸を用いた場合は硫酸カルシウム・1/2水和物が生成しているのに対し、6 mol/Lの硫酸を用いた場合は硫酸カルシウム・2水和物が生成していることを確認した。その他、浸出温度や浸出時間の影響も調査したが、高温条件や長時間の浸出による浸出率の向上は確認されなかったことから、硫酸濃度 1 mol/L、浸出温度 20 ℃、浸出時間 1 hrを今年度の最適浸出条件とした。 また硫酸の他にも、硝酸および塩酸を用いた浸出を試みた結果、いずれの酸を用いた場合もレアアースを浸出可能であることを明らかにした。硝酸および塩酸を用いた場合は、アパタイトの主成分であるカルシウムが溶解してしまうが、硫酸を用いた場合は硫酸カルシウムとして固定化可能であった。以上の結果から、アパタイトからのレアアース浸出剤としては硫酸が適当であり、アパタイト鉱石からレアアースを選択的に浸出分離できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画としては、硫酸を用いた浸出によりアパタイトを主体とする天然鉱石から90%以上のレアアースを浸出分離することであった。平成28年度の研究成果により、硫酸濃度を制御することで、アパタイト中に含まれるレアアースを90%以上浸出可能であることを明らかにした。また、硫酸の他にも、硝酸や塩酸における浸出挙動を確認し、レアアースは浸出可能であるものの、レアアースの選択的な浸出を行うためには、硫酸が最も適していることを把握した。以上の内容を総括し、平成28年における本事業の研究進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
硫酸浸出液からのレアアースを回収するため、溶媒抽出および有機酸沈殿回収法を調査する。溶媒抽出では、レアアースの抽出剤として汎用的なTBP(トリブチルリン酸)やD2EHPA(ジ2エチルヘキシルリン酸)等を用い、抽出時のpHや温度の変化に伴うレアアースの抽出挙動を確認し、各レアアースを単独で分離できる条件を明らかにする。また、溶媒抽出で分離・濃縮したレアアース溶液に対し、有機酸沈殿による沈殿回収を行う。有機酸としてはシュウ酸を用いて、シュウ酸添加量、反応温度、反応pHの変化に伴うレアアースの沈殿挙動を確認し、浸出と併せて計80%以上のレアアース回収率が得られる条件を見出す。アパタイト鉱石に含まれる各元素と浸出剤の添加量などの関係を実験結果から量論的に考察する。それらを補うための手段として、電気化学および熱力学をベースにした化学平衡計算ソフトウェア&データベース(STABCAL)を用いて、他成分系(多元系)の化学平衡計算を行い、各元素の浸出メカニズムと溶液中での存在形態の予測を行う。
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Research Products
(2 results)