2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘリカル原型炉のダイバータプラズマ予測を目指した周辺プラズマ輸送モデル開発
Project/Area Number |
16K18340
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
河村 学思 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70509520)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁場閉じ込め核融合 / 周辺プラズマ / 輸送モデリング / プラズマ壁相互作用 / LHD / FFHR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヘリカル型核融合原型炉に対する予測性向上を目的に周辺プラズマモデル開発を行うことを目的に,既存の装置で実験計測との比較を含めて実績のあるEMC3-EIRENEコードを用いて,モデルの検証や原型炉条件により近い計算を行うものである.今年度は以下のような研究活動を行い成果を得た. 大型ヘリカル装置(LHD)を2倍および4倍に拡大した計算メッシュの作成を行った.これは,LHDの設計に基づいて行われているヘリカル型原型炉設計研究であるFFHRを念頭に置いたものである.開発したメッシュを用い,装置サイズが粒子輸送に与える影響の解析を行った.炉心電子密度を固定し,装置サイズを2倍および4倍にすると同時に加熱量を8倍および64倍に増やし,4倍サイズの場合に核反応熱出力1GWに相当する条件で計算を行った.その結果,装置拡大にしたがって電子密度がより周辺でピークし,炉心よりも高密度になる現象が見られた.その理由は,中性水素分子・原子は磁場に拘束されず,電離等のスケール長が装置サイズによらないため,装置の拡大とともに電離位置が相対的に外側に移動し,炉心の電子密度増加へ直接寄与しにくくなったため,固定した炉心電子密度を維持するために周辺電子密度が高くなったからであることがわかった.この成果は原型炉運転制御に関する報告書の一部として29年度にNIFS-MEMO(核融合科学研究所発行)上で公開される予定である. 装置規模のモデリングに加え,プラズマ対向壁近傍のプラズマモデリングの重要性も,装置の健全性や不純物の発生機構と関連し重要なテーマであるため,粒子シミュレーションコードPICS2を用いて,表面形状が粒子束分布に及ぼす影響を解析した.その成果はPlasma Wall Interaction国際会議(ローマ)で発表し,J. Nucl. Mater. Energyへの論文掲載が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置サイズがプラズマへ及ぼす影響について当初の計画通りに研究に着手し,中性水素分子・原子の分布に大きな違いをもたらすことを明らかにした.予想以上に大きな違いが生じる結果となり,ガス排気と燃料供給の方法やそれによるプラズマ密度分布制御の重要性がモデリングの観点で確認された.実施計画に上げたLHD計測との不純物に関連する比較研究については実績の項目で述べていないが,窒素ガスパフ放電時のダイバータプローブアレイによる粒子束分布計測との比較を行っており,その成果の一部はLHD実験グループの共著論文として29年度に出版が決定している.29年度にはプローブやボロメータ計測との比較を実施し,モデルの検証および改良を継続する計画である.また,長時間定常放電において放電停止などのリスクとなるダストに関して,EMC3-EIRENEとダスト追跡コードであるDUSTTとの結合に関する共著論文が投稿済みで29年度に出版の見込みである.DEMO炉設計であるFFHRに向けた研究活動に加えて,LHDとの比較研究も論文投稿に向けて準備中である.研究活動は共同研究を通して広がりつつ進展しており,概ね順調に進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に生じた状況の変化として,当初ターゲットとして想定していたFFHR-d1(LHDの4倍拡大をベース)に加えて,小型化で経済性を重視したFFHR-c1(同2.8倍拡大)の必要性が生じた.今年度行ったような単純なスケーリングの解析には影響しないが,計算メッシュの開発に関しては作り直しを避けるために,FFHR設計研究グループと連携を密にして慎重に方針を決める必要がある.必ずしも設計に忠実なメッシュでなくても,基本的な特性を得ることができることがわかったため,メッシュ開発の目標は30年度に延ばし,29年度は現在ある道具立てで可能な研究を優先して行うこととする.また,液体金属を用いるダイバータコンセプトが核融合科学研究所で検討されており,その特性の予測に必要な基礎的なプラズマ分布等の計算を29年度に追加課題として行う計画である.LHDの計測を元にしたモデル開発と検証に関しては,窒素ガスパフに対応したメッシュ(トロイダルの非局所性を扱うためにトーラス方向の複数セクションを扱えるものに拡大)を用いて,発光分布との比較などを行い,不純物輸送のメカニズムの解析を行う計画である.また,モデルの検証として装置を横断した研究の重要性が高まっており,これまでに行ってきたヘリカル型装置であるLHDのみならず,他のトカマク装置でのEMC3-EIRENEの適用も視野に入れた共同研究計画を検討する.
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Causes of Carryover |
研究の中心となる計算コードEMC3-EIRENEの開発者Dr.Feng(ドイツ・マックスプランクプラズマ物理研究所)を訪問しての研究打ち合わせを予定していたが,業績概要で述べたように計算メッシュの新規開発を計画後半に延期して現在ある道具立てでの研究を優先する方がいいと判断したため,またコード自体の変更も29年度以降で問題ないと判断したため,Dr. Fengとの研究打ち合わせはメールによるものだけとした.このため,渡航費用を次年度使用額に持ち越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に開催される国際会議として,International Stellarator/Heliotron WorkshopとInternational Toki Conference and Asia Plasma and Fusion Association Conferenceがあり,これら両方または片方で成果発表を行う計画である.また,論文投稿へ向けて準備を進めており,その投稿費用として使用予定である.また,28年度の繰越があるため,29年度の予算を合わせて,メモリー容量の大きいワークステーションの導入を検討している.
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Research Products
(4 results)