2017 Fiscal Year Research-status Report
蛍光修飾オリゴヌクレオチドを用いた放射線による生体分子損傷量の評価手法の開発
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16K18347
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松尾 陽一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (90568883)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線 / DNA切断 / 放射線影響 / オリゴヌクレオチド |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線による生体影響の要因は、DNA を中心とした生体分子の損傷が主であり、放射線防護・放射線安全の観点から、DNAレベルで放射線照射による影響を評価し、放射線被ばく量を推定することは重要である。これらの課題を解決する手法として申請者は、オリゴヌクレオチドを蛍光修飾したサンプルを用い、放射線による損傷量を蛍光強度にて読みとる手法を開発している。 平成29年度は、オリゴヌクレオチドの配列を変えた3種類のオリゴヌクレオチドに対して、感度の向上を確認する検討を行った。また、より実際のDNAに近い二本鎖のオリゴヌクレオチドを用いた実験を行った。結果として、出芽酵母のURA3の配列、T…TGT…T配列、Aのみの配列という3種類の塩基配列の異なるオリゴヌクレオチドのなかで、T…TGT…T配列について放射線感受性が高い、すなわち切断しやすい傾向にあることがわかった。また、2本鎖のオリゴヌクレオチドについても、これまで試験してきた1本鎖のオリゴヌクレオチドと同様、蛍光修飾法によって切断が評価できることが示唆された。 一方で、高線量域では0Gyの場合の蛍光強度を下回るような蛍光強度の減少が確認された。また、6-FAM、TAMRAについても高線量域では蛍光強度の減少が確認されたことから、高線量域では放射線により蛍光物質が分解し、蛍光強度が低下したものと考えられる。放射線分解の寄与へ減らす方策が求められるが、放射線分解反応に比較的強いRhodamine類の蛍光修飾分子に着目することが解決方策となると考えている。 平成30年度は感度の向上、2本鎖オレゴヌクレオチドを用いた切断の定量評価手法としての確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、より実際のDNAに近い2本鎖のオリゴヌクレオチドを対象に実験を行い、これまで試験してきた1本鎖のオリゴヌクレオチドと同様、蛍光修飾法によって切断が評価できることが示された。また感度の向上のために、オリゴヌクレオチドの配列を変えた3種類のオリゴヌクレオチドに対して、感度の向上を確認する検討を行い、配列を変えることにより感度を変化させる見通しがついた(日本放射線安全管理学会 第16回学術大会、2017で報告)。これらの実績により、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、低線量領域(100mGy 以下)において一本鎖切断および二本鎖切断の収量を評価できることを目標として、最適なサンプル・条件を決定する。この検討におけるパラメータは蛍光物質の選択、濃度、サンプル調整方法などを候補とする。最終的には、蛍光強度を測定するための最適条件を抽出する。 これまでの研究により、蛍光物質の放射線分解が問題になることが予想される。放射線分解反応に比較的強いRhodamine類の蛍光修飾分子に着目することを計画している。
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Causes of Carryover |
当初予定していたより使用した試薬が少なく、86,279円の次年度使用額が生じた。平成30年度は最終年度であり、前年度明らかになった課題の解決のため、多くの試験をする必要があり、平成29年度の差額を平成30年度に使用する。主な用途としては蛍光修飾オリゴヌクレオチドおよび酵素試薬など消耗品に使用する。
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Research Products
(2 results)