2017 Fiscal Year Research-status Report
嗅神経細胞分化の遺伝学的操作による本能行動の制御とその神経基盤の解明
Project/Area Number |
16K18361
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
榎本 孝幸 東京工業大学, 生命理工学院, 研究員 (70635680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 本能行動 / 神経回路形成 / 神経伝達 / 細胞分化制御 / 転写因子 / 嗅覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象である嗅覚は食物探索や危険回避など動物の生存に重要な役割を担っており、本能的な適応行動と密接に関連する。食物や危険物などに由来する匂い分子は主に鼻腔内の嗅上皮に存在する嗅神経細胞によって検出される。これら嗅神経細胞は発現する受容体の種類によってClassⅠ型とClassⅡ型の2種類に分かれているが、その機能的意義は良く解っていない。本研究課題では、2種類の嗅神経細胞の産生を遺伝学的に操作した変異マウスを用いて、異なる2種類の嗅神経細胞からの情報入力の変化が脳の中枢神経回路形成と、嗅覚を介した本能行動に及ぼす影響を明らかにすることを目指している。 研究代表者らは、これまでに転写因子Bcl11bが2種類の嗅神経細胞の分化を制御していることを発見し、Bcl11b遺伝子発現の操作によって産生される嗅神経細胞タイプの制御に成功している。平成28年度及び、平成29年度の本研究課題の実施によって、新たに作出した嗅覚特異的Bcl11b機能欠損/獲得型変異マウスはClass IとClass II嗅神経細胞の割合が変化しており、忌避臭に対する神経応答や回避行動も産生される細胞数に対応して変化することを突き止めた。当該専門分野の研究会と学会で本研究の成果についての発表を行い、平成29年度に科学雑誌に投稿したが不採択となった。実験データをさらに追加して論文を再投稿するために研究実施計画を1年間延長し、現在再度論文を投稿するために準備中である。延長した研究実施計画の1年間で、より詳細なデータを取得し、末梢レベルで2種類の嗅神経細胞の産生を操作することによる中枢への入力の変化が嗅覚高次中枢の神経回路形成において及ぼす影響を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題である、嗅神経細胞分化の遺伝学的操作による本能行動の制御とその神経基盤の解明のために、嗅覚特異的Bcl11b機能欠損/獲得型変異マウスにおける①匂いに対する神経活動、②嗅覚を介した本能行動、③嗅覚高次中枢の神経回路形成における影響の解析について、平成28年度から平成29年度までの2年間で実施する計画であったが、最終年度に投稿した論文が不採択となったため実験データを追加して論文を再投稿するために、本研究課題の実施期間を1年間延長した。 平成29年度までの研究計画の実施によって、産生される嗅神経細胞タイプが変化する嗅覚特異的Bcl11b機能欠損/獲得型変異マウスを用いて、上記項目①匂いに対する神経活動及び、②嗅覚を介した本能行動を解析した結果、末梢において産生される嗅神経細胞タイプの変化が匂いに対する神経活動と、嗅覚を介する本能行動に影響を及ぼすことが明らかとなった。平成28年度に本研究課題の結果に関する1件の学会発表を、平成29年に1件の当該専門分野の研究会での発表を行った。現在、追加実験データを纏めて論文発表のための準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の延長した1年間で、末梢で産生される嗅神経細胞タイプの変化が嗅覚高次中枢の神経回路形成における影響を明らかにすることを目指す。各変異マウス脳に順行性・逆行性神経トレーサーを注入することによって嗅球から嗅覚高次中枢への神経回路を可視化することによって、コントロールと変異マウス間で比較解析することが可能になる。神経トレーサーを注入した後、近年報告された神経組織の微細構造の安定性に優れている生体組織透明化試薬Sca/eSを用いて脳サンプルを透明化させることによって、より詳しい3次元での嗅球から各嗅覚高次中枢への神経回路を解析する。以上の解析によって、末梢の感覚神経細胞であるClass I型とClass II型の嗅神経細胞の産生を遺伝学的に操作することによる嗅覚を介した動物の本能行動の制御と、その神経基盤を明らかに出来るだけではなく、脳神経回路網形成における末梢神経からのインプットの影響の理解に寄与すると考えられる。
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Causes of Carryover |
平成29年度に投稿した論文が不採択になったため、さらに実験データを追加してより完成度の高い論文として再投稿することを予定している。延長した平成30年度の1年間の追加実験と、論文投稿に掛かる費用が必要なため次年度使用額が生じた。 平成30年度の延長した1年間の使用計画としては、投稿予定の論文の審査過程における再実験及び追加実験のための費用と、論文が採択された際の掲載費用に充てる予定にしている。
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Research Products
(2 results)