2016 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエ求愛行動をモデルにした馴化調節を担う神経機構の解明
Project/Area Number |
16K18362
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森本 菜央 名古屋大学, 理学研究科, 特任助教 (30762249)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ショウジョウバエ / 馴化 / 聴覚 / 求愛歌 / 聴覚神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は無益・無害な刺激に何度も暴露されると、刺激への反応を低下させる。これが馴化(慣れ)である。しかし、刺激が有益・有害である場合、動物は繰り返される刺激に応答し続けなければならない。このような、刺激への価値判断に応じて、馴化レベルが調節される神経メカニズムはほとんど未解明である。本研究ではショウジョウバエの求愛行動において申請者が独自に確立した系をモデルとし、価値判断システムにより馴化レベルが調節される神経細胞群を単一細胞レベルで同定し、その調節機構と動作原理の解明を目指している。 そのため、当該年度においては、神経細胞の活動性を評価するために必須である、神経活動マーカーを免疫組織学的に標識する手法の検討を行い、実際にいくつかの候補神経細胞に関して、活動性の評価を行った。これにより、刺激の価値に応じて活動性が変化する神経細胞の同定を進めている。 さらに、どのような調節機構で馴化レベルが調節されているかを明らかにするために、いかなる神経伝達物質の下流で調節が行われているのかを調べている。このため、神経伝達・神経調節を担う様々な分子や受容体の変異体あるいはノックダウン系統を用いて、ショウジョウバエの行動解析を行い、馴化レベル調節に異常のある系統を探索している。その結果、いくつかの系統にて馴化レベル調節の異常を見出した。現在、この示唆された神経伝達・神経調節因子が、上述の候補神経細胞にて機能することで、馴化レベルの調節に貢献するのかを明らかにするために、行動解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
馴化レベルの調節を担う神経回路基盤を単一細胞レベルで解明するためには、馴化行動のレベルを解析できる行動実験系および、馴化行動誘導時の脳内の神経活動レベルを単一細胞レベルで評価する系が必須である。本計画において、私たちはまずこれらの手法の整備を行った。その結果、整備された手法を用いることで、候補となる神経細胞の解析が進展した。以上の成果により、本研究は概ね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、聴覚馴化調節の神経基盤を明らかにする。本研究において、候補神経細胞の解析が進展したので、それをさらに推し進め、情報の価値に応じた馴化調節を担う神経回路機構の解明を行う。具体的には、候補神経細胞のカルシウムイメージングを行い、応答性の変化する神経細胞の特定を行う。さらに、これまでの行動解析で関与が示唆された神経伝達・神経調節物質が、これらの神経細胞の活動を調節し、馴化レベルを調節しているのかを明らかにする。
|
Research Products
(3 results)