2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18368
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
青木 直哉 帝京大学, 薬学部, 講師 (50525334)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 記憶の固定化 / 刻印付け(刷り込み) / 想起 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥類刻印付け(刷り込み)は孵化後間もないヒナが親を追随して覚える学習である。刻印付けの初期記憶の形成に必須な脳領域は大脳連合野に相当するIMM領域であり、視床経由で視覚情報を受ける。このIMM領域は刻印付け記憶が形成された直後に思い出す(想起)には必要だが、24時間後に思い出すのには必要でなくなる。このことから、刻印付けの記憶はIMM領域で形成された後、他の領域に移って長期記憶として固定化(consolidation)されることが予想されていたが、その領域は長く不明であった。その領域として我々はIMHA領域に着目して研究を行ってきた。これまでに、このIMHA領域はIMMからの投射があり、刻印付け記憶の獲得24時間後に破壊すると想起できなくなることが明らかとなっている。本研究の目的は(1)このIMM―IMHA経路が刻印付け記憶の固定化に必要であるか、(2)他の学習の記憶の固定化においても同様に必要であるか、(3)記憶の固定化に関わる分子基盤を明らかにすることである。ウイルスベクターの二重感染による経路選択的伝達遮断を用いて、(1)及び(2)を行い、cDNAマイクロアレイ解析を用いて(3)を行う。当該年度において、(1)及び(2)の実験を行った。(1)において、刻印付け記憶の獲得をテストで確認した群であっても、IMHA―IMHA経路を記憶獲得の24時間後に遮断すると、嗜好スコアが低くなった。この遮断した群の嗜好スコアは遮断していない群と比べて有意に低かった。これは、刻印付け記憶の獲得24時間後に起こると考えられる記憶の固定化に、IMHA―IMHA経路が必要であることを示唆している。(2)においては、統計的な有意差は得られていないが、同様の結果が得られている。これらのことから、学習の種類に関係なくIMHA―IMHA経路は記憶の固定化に必用であると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の(1)IMM―IMHA経路が刻印付け記憶の固定化に必要であるかを明らかにする、(2)IMM―IMHA経路が他の学習の記憶の固定化においても同様に必要であるかを明らかにする、(3)記憶の固定化に関わる分子基盤を明らかにする、の内、当該年度において、(1)及び(2)の実験を行った。「研究実績の概要」で記した通り、(1)において、行動実験で統計的には有意な結果が得られた。しかし、IMHA―IMHA経路を伝達遮断できたかどうかを形態学的に確認することには至っていない。二重感染した神経細胞が発現する蛍光物質GFPの所在によって確認をお試みている。IMM領域の細胞でGFPによって細胞体及びIMHAへ延びる軸索が確認できれば、IMHA―IMHA経路が伝達遮断できていると考えられる。(2)においては、統計的な有意差を得るためには例数を増やす必要がある。(2)においても伝達遮断の形態学的な確認を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度において、(1)及び(2)の実験を行った。「進捗状況」で記した通り、(1)において、行動実験で統計的には有意な結果が得られたが、IMHA―IMHA経路を伝達遮断できたかどうかを形態学的に確認することには至っていない。伝達遮断は抗生物質ドキシサイクリン投与で期間がコントロールされており、標識となるGFPもその期間のみ発現する。そのためGFPの量は少なく、確認を難しくしている。GFPを免疫染色で標識する、脳切片を厚くして軸索を検出しやすくする等を試みている。また、より広範囲の視野で確認するためにバーチャルスライドスキャナ(Nanozoomer-XR)を用いている。(2)においては、統計的な有意差を得るためには例数を増やし、伝達遮断の形態学的な確認も(1)と同様に試みる。(3)の記憶の固定化における分子基盤の解析も並行して進める。まず、刻印付け記憶獲得から3時間後と24時間後のIMHA領域を大脳から切り出し、mRNAを抽出してcDNAマイクロアレイ解析を行う。3時間後にくらべて24時間後のIMHA領域で、より発現が高い遺伝子が記憶の固定化に関わると考えられる。それらの遺伝子の組織レベルでの発現変動を知るために、定量PCRとin situ ハイブリダイゼーションを行う。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を使用してきたため、研究計画に変更はないが、当初の見込み額と使用額が異なったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も実験計画上、多数の動物や試薬・抗体を必要としており、前年度の研究費も含めて、当初予定していた通りに研究計画を進めていく。
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Research Products
(2 results)