2016 Fiscal Year Research-status Report
Neural basis of visual feature perception: investigation with optogenetically induced illusory perception
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16K18372
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
坪田 匡史 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90739145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚認知 / マウス / 光遺伝学 / 光イメージング / 方位弁別 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質において主に視覚情報を司る領域である視覚野は、階層構造を形成している。先行研究から、視覚野の各領域において、視覚情報の中から特徴 (方位など) を抽出するための情報処理が行われていることが知られている。これらの情報処理の担い手として、特定の特徴 (特定の方位など) にのみ選択的な反応を示す神経細胞群が存在する。しかし、視覚野の各領域に存在するこれらの細胞群の活動が、どのようにして、あるいはどの程度、視覚情報中の特徴の認知に影響を与えているかは不明である。本研究課題は、この問題を解決するため、方位を弁別する課題を遂行中のマウスにおいて、特定の方位に選択性を持つ細胞群を人工的に活性化した際の行動への影響を調べることを目的とする。 平成28年度には、視覚野における特定の細胞群のみを選択的に活性化するための手法の確立を行った。具体的には、光活性化カチオンチャネルであるチャネルロドプシンを発現している神経細胞群に対して、Digital micro-mirror device (DMD) を用いて一定のパターンで光照射を行うことにより、in vivoの視覚野において特定の細胞群の選択的な活性化を行うことに成功した。当該結果を含んだ研究成果については、第46回北米神経科学学会において発表を行った。 また、マウスに対する方位弁別課題の訓練に長期間を要していたことが問題であったため、訓練方法の最適化を行った。これによって、訓練開始から26±7日 (平均±標準誤差、マウス8匹に基づくデータ) という短期間で課題の学習を成立させることに成功した。当該結果を含んだ研究成果については、現在学術雑誌に論文として投稿中である。 平成29年度には、上記の研究成果を組み合わせ、方位弁別課題遂行中のマウス視覚野における神経細胞群の選択的活性化実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の遂行にあたっては、2種類の新規な実験手法を確立する必要があった。一つはin vivoの視覚野における特定の神経細胞群の選択的活性化のための手法であり、もう一つはマウスにおける方位弁別課題の効率的な訓練方法である。前者については、交付申請書における実験計画の段階では、神経活動依存的遺伝子プロモーターを利用した手法を用いることを計画していた。しかし、当該手法では非特異的な遺伝子発現が常にある程度観察され、その影響が懸念されたことから、代替手法として「研究実績の概要」に記載したDMDを用いた手法の開発を進めた次第である。神経活動依存的プロモーターを利用した手法についても、今後さらに非特異的発現を抑えるための検討実験を行い、DMDを用いた手法と並行してマウスの行動に対する影響を調べる際の手段として用いる予定である。 他方、マウスの訓練方法の最適化については、当初想定していたよりも大きな進捗があった。本研究課題において採用した方位弁別課題は、先行研究で用いられた同種の課題よりもより複雑であって、そのため訓練方法を最適化したとしても、先行研究で報告されている学習までに要する訓練期間 (3~4週間) よりも長期間を要することが予想された。ところが、様々な検討を行った結果、視覚刺激の背景にリファレンスとなる方位を表示するという工夫を施すことにより、訓練期間を大幅に短縮できることを発見した。これは新規の発見であり、これによって次年度に行うことを予定している行動中の刺激実験の効率が大幅に上昇することが期待される。 交付申請書における実験計画の段階では、初年度に上記2種類の方法の最適化を行い、次年度にマウスの行動中の刺激実験を行うことを予定していた。よって、現在までのところ、当該計画は順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の「理由」欄に記載の通り、本研究計画の遂行に必要な2種類の手法の開発が、初年度の段階でおおむね完了した。よって、次年度には、マウスが方位弁別課題を遂行している最中に視覚野の特定の神経細胞群を選択的に活性化し、その行動に対する影響を調べる実験を行うことを予定している。 当該実験を遂行するにあたっては、学習が成立したマウスが、訓練段階とは異なる環境下においても、訓練時の環境下と同程度のパフォーマンスを示すことが必要となる。すなわち、上記選択的活性化実験においては、マウスは二光子顕微鏡下で課題を遂行する必要があるところ、当該環境下では訓練時には無かった音などが発生するため、その影響でマウスがパフォーマンスを低下させるおそれがある。次年度には、この問題を解決するため、マウスを顕微鏡の環境下に短期間で順応させるための手法の最適化を行う予定である。 また、神経細胞の活性化の条件、特に行動に対する影響を最適化するための、光強度や光照射範囲の検討を行う。さらに、行動に対する影響を評価するための方法についても、検討を行っていく予定である。
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