2017 Fiscal Year Research-status Report
感覚系リボンシナプスにおける興奮性神経伝達物質放出の可視化
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16K18374
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
大島 知子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (50731783)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 網膜 / 神経伝達物質放出 / 蝸牛 / シナプス / 開口放出 / グルタミン酸イメージング / 感覚器 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経終末部にシナプスリボンという共通構造を有する、蝸牛の有毛細胞および網膜の双極細胞での神経伝達物質・グルタミン酸の開口放出動態をグルタミン酸イメージングで比較検討し、聴覚と視覚の情報処理基盤メカニズムを解明する。また、有毛細胞や双極細胞のシナプスリボンをノックアウトした際の効果を解析する。これらの実験により、「蝸牛および網膜において、シナプスリボンはグルタミン酸の開口放出を制御し応答の多様性を作り出すのに寄与する」という仮説を検証する。 平成29年度研究計画:①野生型マウス網膜より双極細胞単離標本を作製し(Tachibana, 1981)、グルタミン酸イメージングを実施する(CtBP結合ペプチドを細胞内に導入し、シナプスリボンの様態も確認する)。②同一双極細胞内にある各シナプス間での神経伝達物質放出の多様性について解析する。 平成29年度研究成果:①野生型マウス網膜および金魚網膜より双極細胞単離標本を作製し、グルタミン酸プローブ導入実験を行った。②先行研究(Francis AA et al. J Neurophysiol.106:1028-1037. 2011.)を参考にCtBP結合ペプチドを作製した。③聴覚中枢・Calyx of Heldの神経終末端にNMDA型グルタミン酸受容体が発現し、その活性化が電位依存性Caチャネルを抑制し神経伝達物質放出を減少させるという現象を見出し国際誌に論文を発表した(Oshima-Takago & Takago, Open Biol. 7. pii:170032, 2017)。④聴覚系のイオンチャネル型グルタミン酸受容体に関する総説を聴覚研究専門誌に発表した(Takago & Oshima-Takago, Hear Res. 362:1-13, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
網膜双極細胞を対象としてのグルタミン酸イメージング実験では、マウスと比較して巨大な神経終末を有する金魚網膜双極細胞を用いることにした(金魚網膜双極細胞には同一網膜内にリボンが有るシナプスと無いシナプスが分布しており、これらを比較解析することで、シナプスリボンの機能を解明できる利点がある)。そして、網膜双極細胞膜表面に特異的に存在するレクチンの発現を解析・決定した上で、そのレクチンに特異的に結合するようグルタミン酸蛍光プローブを改良している。改良型蛍光プローブは双極細胞膜表面に結合し、改良前の蛍光プローブと比較してより強い蛍光シグナルを発したが、細胞質内にも同レベルの蛍光が生じるという現象が見られ、解析に耐え得るS/N比を得られない結果となった。 更に、グルタミン酸イメージングによるシナプス機能の解析と併せて、構造解析を進めるべく、超解像顕微鏡によるシナプスリボンの観察にも取組み始めたところである(本研究代表者の異動先にて実施可能)。
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Strategy for Future Research Activity |
改良型グルタミン酸蛍光プローブによる金魚網膜双極細胞の標識が細胞膜表面に限局しない理由として、蛍光プローブ自体の問題の他に、光学系(蛍光顕微鏡)の設定の問題も考えられた。このため、研究代表者の異動先でも同様の実験を行ってみることにする。異なる2台の蛍光顕微鏡で同様の傾向を認める場合は、再度蛍光プローブを改良する。そして、最適化された蛍光プローブを用いて網膜双極細胞のグルタミン酸イメージング実験を行う。この際、シナプスリボンはCtBP結合ペプチドでライブ標識し、リボンシナプスの位置を同定した上で、神経伝達物質(グルタミン酸)放出量を評価する。 網膜双極細胞の実験に続いて蝸牛有毛細胞のグルタミン酸イメージングを行い、それぞれのデータを比較解析する。このようなアプローチにより、「視覚・聴覚器における神経節細胞の応答多様性に関連して、シナプスリボンがどのような役割を果たすか」という点に関して検討する。得られた研究成果は学会等で発表する
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Causes of Carryover |
実験動物を所属施設内の経費にて調達することができたため。 使用計画:実験動物購入費、試薬購入費、学会出張費など。
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Research Products
(4 results)