2016 Fiscal Year Research-status Report
生体海馬新生ニューロンによる記憶情報処理とその加齢変容
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16K18379
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 純 九州大学, 医学研究院, 助教 (70582708)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海馬 / 神経新生 / コンドロイチン硫酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む哺乳類の海馬歯状回では、生涯にわたって新たなニューロンが産生され続ける。海馬歯状回における顆粒細胞の産生は成体海馬神経新生現象と呼ばれ、認知や記憶、気分や情動などの高次脳機能に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。先行研究によって、神経新生は細胞周囲微小環境 (ニッチ) によって制御されている可能性が指摘されているが、その詳細は分かっていない。そこで本年度は、マウスの海馬歯状回にはWFAレクチンで標識されるコンドロイチン硫酸が顆粒細胞周囲に密に分布していることに着目し、細胞外コンドロイチン硫酸が神経新生ニッチとして機能する可能性を検討した。 従来から、神経新生は環境要因によって変動することが知られており、ストレス下にて新生ニューロンが減少したり、刺激の多い豊かな環境下で新生ニューロンが増加したりすることが報告されている。強制水泳ストレスによって神経新生の減少とコンドロイチン硫酸の減少が生じ、一方で、刺激の多い豊かな環境下で神経新生の増加とコンドロイチン硫酸の増加が確認された。また、コンドロイチン硫酸鎖を切断する酵素(コンドロイチナーゼABC)を海馬歯状回に投与することで、神経新生が減少し、特に神経前駆細胞から成熟神経細胞への分化が抑制されることが分かった。本研究の結果はコンドロイチン硫酸が海馬神経新生ニッチとして機能し、成体海馬神経新生に重要な役割を果たす可能性を示唆したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、成体海馬新生新生の制御機構について新たなメカニズムを解明できており、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 新生顆粒細胞からin vivo傍細胞記録を行い、発火特性や局所フィールド電位を記録することで、コンドロイチン硫酸が新生顆粒細胞の活動様式に与える影響を調べる。また、記録細胞における樹状突起への入力、軸索の分布などに関する神経解剖学的特徴を解析し、コンドロイチン硫酸が、既存の海馬神経回路網への組み込み様式にどのような影響を与えているかを明らかにする。2) 海馬の新生顆粒細胞は、細胞が生まれて特定の時期に提示された学習課題を記憶すると考えられている (学習の臨界期)。新生顆粒細胞におけるc-fos発現を指標として、コンドロイチン硫酸の分解が臨界期に与える影響を明らかにする。3) 加齢に伴うコンドロイチン硫酸の変化と神経新生の減少の関係について明らかにする。
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Causes of Carryover |
一部試薬について年度内の納品が遅れたため、次年度予算で購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年4月中に、試薬の納品が完了する予定である。
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