2016 Fiscal Year Research-status Report
高等脳における神経細胞から幹細胞へのフィードバックシグナルの役割
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16K18381
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
下向 敦範 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 専門職研究員 (00442971)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 脳発生 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
[分子メカニズムの解析]マウスを基盤とした神経細胞と幹細胞間におけるフィードバックシグナルの分子メカニズムの解明については、活性化されたERK MAPKがエンドソーム上に局在し、ダイニンモーターシステムによって輸送されていること、その輸送が神経幹細胞の維持に寄与していることを示唆するデータを得られた。アダプタータンパクの関与については、今後調べていく予定である。 [ツールの開発]マウス胎児脳と比べてフェレット胎児脳を解析する場合、長い時間間隔での解析が必要である。現在の子宮内エレクトロポレーションでは、一過的な遺伝子の導入しかできない。そのため、長期間外来遺伝子の発現が維持できるツールの検討を行った。その結果トランスポゾンシステムを利用した遺伝子発現システムが非常に有用であることがわかった。このシステムを用いることによって、神経細胞や幹細胞特異的な遺伝子のプロモーターを利用したレポーターや、クリスパー/キャスによる遺伝子ノックアウトなどの遺伝解析ツールが安定的に使用できることが判明した。 [種間の違いの基礎データ収集]フェレット発生脳において、FGF18の発現パターンを調べたところ概ね、マウスと類似していることがわかった。しかしながら、下流のERK MAPKの活性化は、マウスとフェレットでは活性化の開始のタイミングが違うことがわかり、上流の因子について、追加的な解析が必要であることが考えられた。また、胎児脳スライス培養を用いて、阻害剤をつかって解析する系を確立させ、上流の経路を調べたところ、マウスに比べて、フェレットではFGFシグナルとは異なるシグナル経路が追加的に関与していることが示唆された。このような違いが脳の形成、特にサイズやシワといった脳の発生に影響を与えているどうか解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子メカニズムの解明については、高速に移動する輸送小胞上のERK MPAKの活性をライブでの測定と取得した画像の解析にかなりの時間を要したが、適切な撮影条件と画像処理アルゴリズムをみいだし、安定的にデータを解析できるようになった。これらのノウハウは、今後も有用であると考えらる。 ツールの開発等は順調にすすんでおり、これらのツールをつかって、次年度は、フェレットでの解析を試みる予定である。 種間において候補遺伝子の発現パターンの解析については、遺伝子をさらに追加して、解析を行いたいと考えている。また、上流の因子を絞り込むために、マウスおよびフェレットの胎児脳スライス培養を用いて、阻害剤をつかって解析する系を確立できた。これらの解析法を組み合わせることによって、通常の遺伝学的解析が難しいフェレットにおいても、今後の解析がスムーズに進むと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスを基盤とした神経細胞と幹細胞間におけるフィードバックシグナルの分子メカニズムの解明については、活性化されたERK MAPKがどのような分子を介してエンドソーム上に局在しているのか、クリスパー/キャスと子宮内エレクトロポレーションを利用した遺伝子ノックアウトを用いて、アダプタータンパク関与、同定を行っていきたい。また、輸送中の詳細な局在については、非常に小さな輸送小胞に局在化していることが判明しているので、超解像顕微鏡等を利用して、その組成を明らかにしたい。さらに、スライス培養と阻害剤による解析を通して、マウス、フェレット間で外部のシグナルを幹細胞がどこから、どうのように受け取っているのかを、解析していく予定である。ツールに関しては、トランスポゾンシステムをベースに、最終年度にむけて、時空間的に遺伝子の発現やタンパクの活性をコントロールできるように検討を進める。これらの手法、マウスで得られた知見を元に種間の違いについて明らかにして行きたい。特に下流のERK MPAKシグナルの活性化を指標に、ステージや脳の領域に着目しながら、その相違について解析を行い、詳細な解析をおこなう時期、場所を絞り込んで行く予定である。
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Causes of Carryover |
少額の余りのために、適切な消耗品を購入するには、足りないため次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額であるので、次年度の消耗品を購入する際に合わせて使用していく予定である。
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Research Products
(3 results)