2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18385
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
和田 英治 東京医科大学, 医学部, 助教 (60756948)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筋ジストロフィー / インターロイキン6 / 骨格筋の線維化 / 骨格筋幹細胞 / 筋再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最も重篤な筋疾患の一つであり未だ根本的治療法が確立されていないデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルマウス(ジストロフィン/ユートロフィン二重欠損: dKOマウス)とメロシン欠損型先天性筋ジストロフィー(CMD)のモデルマウス(dy/dyマウス)に対し、抗インターロイキン-6(IL-6)受容体抗体であるMR16-1の長期投与による治療効果を検討することを目的とする。近年、DMD患者やモデルマウスの血中と筋組織において、IL-6が高値であることが明らかとなっている。また、我々の検討ではdy/dyマウスの血中ならびに筋組織においてもIL-6が高値であった。IL-6はマクロファージなどから産生され、T細胞を活性化する炎症性サイトカインである一方、骨格筋からも分泌されるマイオカインとしても知られている。我々は、DMDやCMD骨格筋におけるIL-6高値は筋損傷後の炎症に伴って起こり、筋再生の遅延や筋組織の線維化など症状悪化に寄与していると考えた。そこで初年度は、dKOマウスに対し生後14日齢から90日齢に達するまで週1回(25 mg/kg)の抗体投与を行った。その結果、骨格筋におけるIL-6シグナルが顕著に抑制され、体重変化や背骨の変形などに有意な差は認められなかったが、血中クレアチニンキナーゼ値は有意に低下し、筋再生の促進と筋症状の改善(筋組織内線維化の減少や筋径の回復など)が認められた。尚、長期投与により血中IL-6濃度は抗体投与群で有意に増加したものの、他臓器における形態的異常は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、dKOマウスへ対するMR16-1の投与を終了し、IL-6阻害による筋変性改善効果を検討することを目的とした。当初の目的どおり、筋再生促進と線維化抑制の効果を中心に解析を進め、抗体投与によるIL-6阻害と筋症状改善効果を証明した。また、qPCR解析を用いて筋部位別(四肢筋、心筋、呼吸筋)の比較を行い、dKOマウスにおいてIL-6シグナルは四肢筋で最も亢進していることを明らかにした。次にdy/+(ヘテロ)マウスからdy/dy(ホモ)マウスを産出させ、生後30日齢から90日齢に達するまで抗体投与を行い、コントロール群と抗体投与群ともに十分な個体数を得ることができた。すでに、抗体投与群はgrip strengthテストにおける有意な筋力増加を認めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の予定通り、抗体投与を完了したdy/dyマウスの筋症状に対するMR16-1投与の効果を解析する。予備検討の結果、dy/dyマウスは心臓や横隔膜には筋変性が認められず、四肢筋においても部位によって筋症状の重症度が異なることを確認している。そこで、90日齢dy/dyマウスにおいて筋内線維化の顕著な順に、腓腹筋、大腿四頭筋、上腕三頭筋を評価することとする。また筋症状の重症度やdKOマウスとの比較によってIL-6阻害薬の効果が相違するのかを検討していく。
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Causes of Carryover |
研究実施状況などは計画通り進んでいたが、少額の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はdy/dyマウスに対するMR16-1抗体投与の効果を検討するため、次年度使用額は引き続き、本研究費用に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)