2017 Fiscal Year Research-status Report
モデルラット作製に利用可能な新規人工染色体ベクターの開発
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16K18401
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
香月 加奈子 鳥取大学, 染色体工学研究センター, 特命助教 (00774043)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実験動物学 / 染色体工学 / 人工染色体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、巨大な遺伝子(群)を搭載できるラット人工染色体(Rat Artificial Chromosome:RAC)ベクターを構築し、近年樹立されたラットES細胞あるいはラットiPS細胞を用いて、ヒト型モデルラット作製を行うことである。 前年度はラット胚性繊維芽細胞をiPS細胞へと誘導し、RACベクターの作製を試みた。薬剤耐性遺伝子とGFP(緑色蛍光)遺伝子の搭載、ラット4番染色体を保持したマウスA9細胞の取得には成功した。ラット4番染色体は末端動原体染色体(短腕が反復配列とテロメア配列のみで構成された染色体)であり、短腕部分に遺伝子が無く、遺伝子を除去する工程を省略できるので都合が良い。しかし、ラット4番染色体を安定した染色体改変が可能なニワトリB前駆(DT40)細胞へ導入する事が出来なかった。 そこで、平成29年度は、ラットES細胞を用いたRACベクターの構築を試みた。ラット4番染色体上に薬剤耐性遺伝子を搭載したラットES細胞とマウスA9細胞の細胞融合を行った。その結果、ラット4番染色体を保持しているマウスA9細胞を3クローン取得した。そのうち、ラット4番染色体の保持率が高かったA9細胞1クローンを用いて、チャイニーズハムスター(CHO-K1)細胞へと微小核融合を行ったところ、正常なラット4番染色体を保持し、かつ染色体保持率も高い株が7クローン取得できた。次に、ラット4番染色体を保持したCHO-K1細胞1クローンを用いてニワトリB前駆(DT40)細胞へ微小核融合を行った結果、正常なラット4番染色体を保持したDT40細胞を2クローン獲得できた。 今後は、染色体改変ベクターを用いて、DT40細胞内でラット4番染色体を改変し、RACベクターを構築していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に、ラット人工染色体(Rat Artificial Chromosome:RAC)ベクターの構築として、以下のステップを進める事が出来た。 ①ラット4番染色体に薬剤耐性遺伝子を導入したラットES細胞とマウスA9細胞の細胞融合(ラット4番染色体を保持したマウスA9細胞の取得) ②微小核細胞融合法を用いて、ラット4番染色体をマウスA9細胞から染色体導入効率の高いチャイニーズハムスター(CHO-K1)細胞へ導入(ラット4番染色体を保持したCHO-K1細胞の取得) ③微小核細胞融合法を用いて、ラット4番染色体をCHO-K1細胞から相同組み換え頻度の高いニワトリ前駆(DT40)細胞へ導入(ラット4番染色体を保持したDT40細胞の取得) ④染色体改変ベクターの作製に着手 前年度は、予期せぬ事に③のニワトリ前駆(DT40)細胞への導入が出来なかった。しかし、平成29年度には、ラットES細胞やCHO-K1細胞を用いる事で、このボトルネックを回避し、ステップを順調に進める事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としてまずは以下のステップでラット人工染色体(Rat Artificial Chromosome:RAC)ベクターの構築を進める予定である。 ①ラット4番染色体改変ベクター(人工テロメア導入ベクターとloxPサイト+緑色蛍光遺伝 子+薬剤耐性遺伝子導入ベクターの2種)の構築 ②ラット4番染色体の任意配列に人工テロメア配列を導入し、染色体上の遺伝子を除去 ③遺伝子を除去したラット4番染色体に遺伝子搭載用のloxPサイトと評価マーカーとして用いるEGFP(緑色蛍光)遺伝子発現ユニットを挿入 RACベクター構築後は、微小核細胞融合法によりES細胞へと導入し、ES細胞におけるRACベクターの安定性の検証を行う。またキメララット作製およびラット個体組織におけるRACベクターの安定性の検証などを行う予定である。
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