2016 Fiscal Year Research-status Report
自然発症疾患コモンマーモセットを用いた糞便微生物叢移植(FMT)療法の検証
Project/Area Number |
16K18407
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
井上 貴史 公益財団法人実験動物中央研究所, マーモセット研究部, 室長 (60465937)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マーモセット / 非ヒト霊長類 / 実験動物 / 腸内細菌 / 糞便微生物叢移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常者の糞便を患者の腸内に注入する糞便微生物叢移植(Fecal microbiota transplantation, FMT)療法は、再発性Clostridium difficile感染症(CDI)に対する治療効果が報告され、炎症性腸疾患やメタボリックシンドロームなどに対しても有効性が示唆されている。FMT療法の適応疾患の拡大とその有効性の機序解明のためには、動物モデルでの検証が不可欠であり、なかでも腸内環境や疾患の病態がヒトに類似する霊長類モデルが期待される。そこで、本研究ではFMT療法の前臨床研究に有用な霊長類モデルの確立を目的として、コモンマーモセットを用いてClostridium difficile感染症(CDI)、慢性腸炎、肥満の自然発症疾患に対するFMT療法の有効性の検証を進めた。 慢性腸炎を呈したマーモセットにおいて、事前の抗生物質投与を施した後に健常個体より採取した糞便を投与したところ、一部の個体において体重増加と便性状の改善、血液検査値の改善が観察され、これら個体の糞便細菌叢はFMT前後において変化が認められた。また、C. difficile毒素検査陽性に伴う異常便が認められたCDIマーモセットにおいて、抗生物質治療後にFMTを実施したところ、FMTを実施しない場合にくらべてCDIの再発が少ないことが観察された。マーモセットの自然発症慢性腸炎とCDIについてFMTによる改善効果が観察されたことから、今後、自然発症肥満においても同様の検討を実施し、病態改善の機序について腸内細菌叢解析と各種検査により詳細な解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FMT療法検証の対象のマーモセット自然発症疾患として、慢性腸炎、CDI、肥満を計画しており、慢性腸炎とCDIについてはFMTの評価実験を実施できたが、FMTプロトコル検討のための予備実験に時間を要したため、肥満については解析が進められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
マーモセットの自然発症慢性腸炎とCDIについてはFMTによる改善効果が観察されたため、病態改善の機序について腸内細菌叢解析と各種検査により詳細な解析を進める。さらに、昨年度実施できなかった自然発症肥満マーモセットにおけるFMTの効果解析を行い、計画した研究を完了させる。
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