2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞接着分子CADM1によるHippo経路の制御機構の解明
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16K18412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊東 剛 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20733075)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Hippo経路 / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hippo経路は接触阻害や器官サイズの制御を担う、接着分子を受容体とする腫瘍抑制シグナルであると考えられているが、その接着受容体は特定されていない。一方で免疫グロブリンファミリー接着分子CADM1は非小細胞肺癌におけるがん抑制遺伝子であるが、腫瘍抑制の分子機構は解明されていない。本研究は、CADM1がHippo経路の受容体として働き得るのではないかという着想のもと、CADM1によるHippo経路の制御の詳細な分子機構について検討し、CADM1の腫瘍抑制効果がHippo経路を介しているかどうか明らかにすることを目的として行った。 CADM1が肺腺がんにおけるHippo経路の制御に関与するかどうかを明らかにするため、まずCADM1の発現が低く、且つLATS1/2及びYAPの発現が保たれている肺腺がん細胞株7種類についてCADM1の安定発現株を作成した。各細胞のYAPのSer127におけるリン酸化を検討したところ、HCC827及びNCI-H292細胞においてCADM1の導入によるYAPのリン酸化の亢進を認めた。HCC827細胞のCADM1導入株では、YAPのリン酸化の亢進に伴い、YAPの標的遺伝子であるCTGF及びCYR61遺伝子のmRNAが有意に減少することを確認した。また、同細胞に対して過酸化水素による酸化ストレス刺激を行ったところ、コントロール細胞と比較して、LATS1/2のリン酸化の上昇を伴い、YAPのリン酸化の有意な上昇が認められた。したがって、CADM1が肺腺がん細胞株におけるHippo経路の活性化に寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CADM1によるHippo経路の制御を示唆するデータが得られたことから、おおむね研究計画に則って進めることができているが、CADM1とHippo経路をつなぐ分子機構の解析に少し遅れが生じている。Hippo経路の活性が細胞密度に影響を受けるため実験結果のばらつきが大きく、再現性の高い実験条件を決定する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
CADM1がHippo経路をどのように制御するか明らかにする。CADM1は細胞内領域に4.1タンパク質結合モチーフとPDZ II 結合モチーフを有しており、両モチーフの変異体を用いてCADM1結合タンパク質のHippo経路への関与について検討する。また、CADM1はHippo経路構成因子であるLATS2及び14-3-3と相互作用することを既に見出しており、これらの因子の関与についてsiRNAを用いたノックダウンにより検討する。 CADM1による腫瘍抑制効果がHippo経路を介するかどうかを確かめる。CADM1の導入とYAPのノックダウンを同時に行った場合に両者の腫瘍抑制効果が相乗的かどうか、またCADM1とHippo経路を仲介する分子をノックダウンした場合にCADM1による腫瘍抑制効果が低下するかどうかについてコロニー形成能、浸潤能、マウス皮下における増殖能について検討する。さらに、ヒト肺腺がん検体を用いてCADM1とYAPの免疫染色を行い、CADM1の発現とYAPの発現、局在、及びリン酸化に相関があるかどうかを検討する。
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