2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌細胞におけるCDX1とCDX2によるNotchシグナルの抑制機序の解明
Project/Area Number |
16K18415
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
堀 一也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (50749059)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大腸癌 / CDX1 / CDX2 / Notchシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において私たちは、大腸癌細胞におけるCDX1とCDX2によるNotchシグナルの抑制機序の解明を進めている。Notchシグナルの下流標的遺伝子の転写活性化は、DNA結合タンパク質であるRBP-Jを介して起こることが知られている。そこで、ホメオボックス転写因子であるCDX1とCDX2が、Notchシグナルのエフェクター分子であるRBP-Jを介した遺伝子発現を制御する可能性を検証した。最初に、Flag-CDX1またはFlag-CDX2の発現をTetシステムにより誘導する、私たちが作成した大腸癌細胞株を用いて、CDX1またはCDX2とRBP-Jのタンパク質間互作用を、共免疫沈降法により解析した。その結果、CDX1とCDX2が、RBP-Jと複合体を形成することが分かった。そこで、CDX1とCDX2は、直接的にNotchシグナルを制御していると仮説を立てた。次に、CDX1とCDX2によるNotch標的遺伝子の発現量の調節機構を解明するため、上述のFlag-CDX1またはFlag-CDX2誘導大腸癌細胞株を用いて、次世代シークエンサーを使用したクロマチン免疫沈降法(ChIP-seq法)による解析を行った。その結果、Notch標的遺伝子(HES1など)の発現調節に関与すると思われるゲノム領域において、CDX1またはCDX2が結合する新規のゲノム領域を同定した。同定したゲノム領域は、ChIP-qPCR法により、内在性のCDX1またはCDX2が結合することも確認した。これらの結果から、CDX1とCDX2は、本研究により同定したゲノム領域を介して、直接的にNotch標的遺伝子の発現を制御していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析によって、ホメオボックス転写因子であるCDX1とCDX2が、Notchシグナルのエフェクター分子であるRBP-Jと、タンパク質複合体を形成することを明らかにした。この結果は、大腸癌細胞において、CDX1とCDX2が直接的にNotchシグナルを制御していることを強く示唆している。CDX1とCDX2は成体では腸上皮細胞に特異的に働く分子であることから、CDX1とCDX2に着眼した本研究の遂行により、大腸癌細胞のNotchシグナルを特異的に抑制する分子機序を解明できると考えている。また、ChIP-seq法により、CDX1またはCDX2が結合するゲノム領域を網羅的に解析した。さらに、同定したCDX1とCDX2の結合領域の近傍に位置する遺伝子を解析したところ、HES1などのNotch標的遺伝子の他に、大腸癌悪性化に関与することが知られている遺伝子も含まれていた。したがって、本研究課題の遂行により、大腸癌細胞におけるCDX1とCDX2によるNotchシグナルの抑制機序の解明のみならず、大腸癌悪性化の機序解明に貢献することが期待される。上記の実験は予期していたよりも順調に進んでいる。また、ショウジョウバエをモデル生物として用いた、CDX1とCDX2によるNotchシグナル活性の制御に関与する新規遺伝子の網羅的スクリーニングの実験も徐々に進んでいる。以上の理由により、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CDX1とCDX2はホメオボックス転写因子である。既知の転写因子は単独では機能せず、多数の転写因子と複合体を形成し、標的遺伝子の転写を活性化することが報告されている。そこで、CDX1またはCDX2と、既知のRBP-J結合タンパク質(MAMなど)との相互作用を、共免疫沈降法により検証する。さらに、CDX1またはCDX2と複合体を形成するタンパク質を、ショットガン質量分析法(LC-MS/MS)により網羅的に解析する。同定したタンパク質は、予測される機能に応じて実験系を構築する。とくに、CDX1またはCDX2との複合体形成によって誘発される、Notch受容体の翻訳後修飾(ユビキチン化やアセチル化)や、Notchシグナルの活性の変化を、培養細胞を用いた生化学的実験やルシフェラーゼレポーター解析により調べる。 また、これまでの研究では、Notch標的遺伝子の発現調節領域における、CDX1とCDX2が結合するゲノム領域を同定した。今後、同定した結合領域を含むゲノム領域をクローニングし、ルシフェラーゼ遺伝子を含むレポーター解析用のベクターに組み込む。そのレポーターコンストラクトを大腸癌細胞(DLD1またはLS174T)に導入し、CDX1とCDX2による直接的な発現調節の可能性を検証する。さらに、CDX1とCDX2のゲノム結合領域を狭めてから、CDX1とCDX2が結合する配列(TATAAAA)とRBP-J結合配列((C/T)GTGGGAA)を検索し、それらの配列に変異を導入する。その変異型レポーターを用いて、ルシフェラーゼレポーター解析などを行い、CDX1とCDX2のDNAへの結合を介した転写機能依存性のNotch標的遺伝子の発現量の調節機構を解析する
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Enhanced intestinal mucosal barrier function by homeoprotein CDX2 through autophagy2016
Author(s)
Koji Aoki, Mako Nakaya, Kazuya Hori, Katsuya Okawa, Isei Tanida, Taira Kobayashi, Hitomi Mimuro, Takahito Sanada, Chihiro Sasakawa, Makoto M. Taketo, Manabu Sugai
Organizer
第39回日本分子生物学会年会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
Year and Date
2016-11-30 – 2016-12-02
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