2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18416
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐賀 公太郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00563389)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌細胞株 (DU145、PC3) に GFP、または GFP-NANOG (GN) を恒常的に過剰発現させた組換え細胞株 (GFP-DU145、GN-DU145、GFP-PC3、GN-PC3) を樹立した。各過剰発現細胞株の増殖速度はそれぞれの親株と同じであった。各過剰発現細胞株、及びそれぞれの親株を NK 様細胞 (MTA) と共培養し、48 時間後の各細胞の生存率を検討した。その結果、DU145、PC3 共に、親株及び GFP 過剰発現細胞株と比較して GN 過剰発現細胞株は高い生存率を示した。さらに、NK 細胞中和抗体(抗アシアロGM1 抗体)または非特異的抗体を投与した SCID マウスの背部皮下に接着培養 GFP-、及び GN-DU145 を移植すると、非特異的抗体投与群においてGFP-DU145 は腫瘍を形成できなかったのに対し、GN-DU145 は 100% の腫瘍形成能を示した。一方、NK 細胞中和抗体投与群においてはGFP-、GN-DU145 共に100% の確率で腫瘍を形成した。これらの結果より、NANOG 過剰発現 DU145 はスフィア形成と同様に NK 細胞攻撃回避能を示すことが示唆された。WT-、GFP-、GN-DU145 における NK 細胞抑制因子と NK 細胞活性化因子の遺伝子発現を定量 PCR法で検討した結果、GN-DU145 で特異的に ICAM1 の発現が低下していることを明らかとした。更に、タンパク質レベルでも GN-DU145 におけるICAM1 の発現低下が確認されたことから、現在は前立腺癌の NK 細胞攻撃回避機構における ICAM1 の関与を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本研究ではスフィア形成 DU145 から NK 細胞攻撃回避に関わる遺伝子を同定する予定であった。しかし、スフィア形成 DU145 を大量に作製するのは非常に困難であった。また、スフィアを形成したがん細胞は全細胞が単一の表現型を有するのではなく、雑多な細胞集団の集まりであることから、NK 細胞攻撃回避機構を有する細胞はスフィア形成細胞の一部の集団であることが予想される。従って、スフィア形成 DU145 から候補遺伝子を見つけ出すことが困難である。しかし、GFP-NANOG 過剰発現 DU145 (GN-DU145) がスフィア形成時と同様のNK 細胞攻撃回避能を示したことから、GN-DU145 を使用することで NK 細胞攻撃回避機構を明らかにすることができる。GN-DU145 は従来の接着培養によってもNK 細胞攻撃回避能を維持しており、すでに単一のクローンとして樹立していることから大量培養が可能である。当初の研究計画とは異なるが、更に迅速に本研究を遂行するためのツールを作製できた。また、NK 細胞攻撃回避に関わる候補遺伝子として ICAM1 を見い出しており、本研究はおおむね順調に進んでいると考えらる。
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Strategy for Future Research Activity |
GFP-NANOG 過剰発現 DU145 (GN-DU145) の NK 細胞攻撃回避に関わる候補遺伝子として ICAM1 が見出されたことから、実際に ICAM1 が関与しているのかを検討する。具体的には、野生型 DU145 (WT-DU145) や GFP 強制発現 DU145 (GFP-DU145) と NK 様細胞 (MTA) の共培養時に ICAM1 中和抗体を投与することで、MTA による攻撃を回避できるかを検討する。また、GN-DU145 の ICAM1 を CRISPR Cas9 システムを利用することで欠損させた ICAM1KO-GN-DU145 を SCID マウスに移植し、NK 細胞攻撃を回避するかどうかを検討する。また、ICAM1 以外の候補遺伝子を検討するために、WT-、GFP-、及び GN-DU145 の遺伝子発現パターンを高速シークエンサーを用いて網羅的に解析する。それによって得られた候補遺伝子に関しては研究計画通りに NK 細胞攻撃回避に関わるのかを検討する。
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