2016 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイドを用いた消化管腫瘍の進展におけるKrasの役割
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16K18430
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
小柳 潤 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 研究員 (80716069)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸がん発がんモデルマウスを用いてオルガノイドの作成を試みた。Apc不活化にはApcコンディショナルアリルを、Kras活性化にはKrasコンディショナルアリルを用い、Apc不活化及びApc不活化+Kras活性化をコンディショナルに誘導できるオルガノイドを樹立できた。これらのオルガノイドを用いて網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、Apc不活化のみのオルガノイドに対しApc不活化とKrasの活性化の両方を誘導すると、低酸素応答遺伝子群及び上皮-間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)関連遺伝子群の発現が顕著に上昇している事が認められた。 臨床検体より大腸がんオルガノイドの樹立を試みた。遺伝性疾患である家族性大腸腺腫症の患者複数人よりオルガノイドの培養に成功した。同一患者内の複数の腺腫からそれぞれ独立にオルガノイド培養に成功した。また、これらのオルガノイドを用いたハイスループット薬効評価系の確立に成功した。網羅的遺伝子発現解析の結果、患者間で発現が大きく異なる遺伝子Xを同定した。遺伝子Xはあるシグナル伝達系のキー遺伝子であり、転写因子ファミリーメンバーの1つである遺伝子Xに対する阻害剤Aを用いた薬効評価実験を行ったところ、阻害剤Aの細胞増殖抑制効果は殆ど見られなかった。EGFR阻害剤ゲフィチニブを用いた併用効果を検討したところ、阻害剤Aはゲフィチニブの細胞増殖抑制効果を強く亢進する事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝性疾患である家族性大腸腺腫症の患者複数人の腺腫からそれぞれ複数のオルガノイド培養に成功し、同一患者内でKRAS変異を有するもの、有さないのもをそれぞれ取得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究で、遺伝子Xに対する阻害剤AはEGFシグナル阻害剤Gefitinibに対する感受性を亢進させる事を明らかにした。しかしながら、遺伝子Xに対する阻害剤は阻害剤A以外にない事、阻害剤Aの特異性が担保出来ないこと等が課題となっている。そこで平成29年度は、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集により遺伝子Aをノックアウトし、阻害剤Aと同様の感受性亢進がみられるかを確かめる。また遺伝子Aのノックアウトマウスも作製しており、in vivoでの発がん、腫瘍抑制に与える効果についても検討する予定である。 今回は遺伝子Xの発現が高い群で併用効果が認められたが、発現の低い群で同様の効果が認められるか、遺伝子Xを強制発現させることでその作用が増幅されるか等も検討していきたい。
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Causes of Carryover |
ノックアウトマウスの作成を予定していたが、がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動におけるノックアウトマウス作成支援に採択された事、海外学会発表の機会がなく計上していた予算を使用しなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に論文として投稿する予定であり、出版費用としての支出が見込まれる。
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