2017 Fiscal Year Research-status Report
スタチン系薬剤の制がん機構の解明と抗腫瘍効果を予測する新たな評価法への展開
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16K18439
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薬効評価と予測 / がん細胞の特性 / 化学療法 / スタチン系薬剤 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
スタチンは血中コレステロール値の低下薬としてその有用性が証明され、現在広く使用されている。スタチンが細胞内のコレステロール合成を抑制するメカニズムは、解糖系から派生するメバロン酸経路の律速因子HMG-CoA還元酵素(HMGCR)を阻害するところにあるが、本薬剤は血中コレステロール値の低下作用以外に、制がん作用を発揮することが報告され、がん細胞に対する効果が注目されている。しかし実際のところ、スタチンによる制がん効果はがん細胞種によってかなり差が存在し、スタチンがどのような特徴を有するがん細胞に有効なのか具体的な特徴はよくわかっていないのが現状である。スタチンが阻害するメバロン酸経路からは、最終産物のコレステロール以外に、中間産物としてタンパクのプレニル化に必要なファルネシル二リン酸やゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、電子伝達系に関わるユビキノン、糖鎖修飾に関わるドリコール等、様々な代謝物が生合成される。これらの中間産物はいずれも細胞活動に重要な物質であるため、抗腫瘍効果にどの程度関与しているのかは不明であった。そこでこれらの中間産物とがん細胞の増殖抑制の関係を検討したところ、スタチンが抗腫瘍効果を発揮するにはタンパクのプレニル化にかかわるGGPPの枯渇が必要であることが明らかとなった。また、我々はこれまでの研究から、上皮系細胞マーカーとしても知られる細胞接着因子E-カドヘリンを細胞膜上に発現しているがん細胞ではスタチンが抗腫瘍効果を発揮しにくいことを報告してきたが、これら上皮系のがん細胞であっても、siRNAによりHMGCRを分子生物学的に抑制するとスタチンが抗腫瘍効果を発揮し始めることを見出した。スタチンががん細胞の増殖を抑える作用点はGGPPの枯渇にあると考えられるが、逆に、がん細胞にスタチン耐性をもたらすメカニズムについては未解明な部分が多く、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スタチンががん細胞の増殖を抑えるメカニズムの1つが、タンパクのプレニル化に必要なゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)の枯渇であることが明らかとなり、研究の進捗状況はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
スタチンが抗腫瘍効果を発揮しにくい上皮系のがん細胞においても、siRNAによりHMGCRを分子生物学的に抑制するとスタチンが抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなってきた。しかし、上皮系のがん細胞は細胞接着因子E-カドヘリンを特異的に発現しており、かつ、このタンパクは細胞接着のみならず細胞増殖にも大きく関与していることから、E-カドヘリンの存在とスタチンによる抗腫瘍効果の直接的な関係性を明らかにする必要がある。E-カドヘリンが関与するHippoシグナル伝達系は複数の異なる細胞外経路からシグナル入力を受け、細胞増殖や抗アポトーシスに関与している。細胞膜上のE-カドヘリンはこのパスウェイを活性化する因子であり、本研究では引き続きHippoシグナル伝達系とスタチン耐性との関わりを検討する。
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Causes of Carryover |
年度内に購入予定であった細胞培養器具の納品に遅延が生じ、納品時期が2018年4月以降になったため次年度使用額が生じた。当該物品は4月下旬に納品予定であり、速やかに次年度使用額を執行する。
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Research Products
(5 results)