2016 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍免疫におけるRegulatory B細胞の役割についての解析
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16K18449
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 忠弘 金沢大学, 附属病院, 助教 (20746383)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 / 腫瘍免疫 / 制御性B細胞 / IL-10 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍(悪性黒色腫)に浸潤するB細胞、T細胞、NK細胞についてフローサイトメトリーによる解析を行った。B細胞に関しては、B細胞特異的PTEN欠損マウスでは野生型マウスと比較してより多くのB細胞が浸潤していた。また、IL-10を産生する制御性B細胞に関しても、B細胞特異的PTEN欠損マウスでは野生型マウスと比較して有意に多かった。さらに、腫瘍に浸潤していた制御性B細胞のサブセットに関しては、B細胞特異的PTEN欠損マウスおよび野生型マウスいずれにおいても80%以上がB1a細胞であった。T細胞に関しては、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、制御性T細胞いずれの細胞数においても、B細胞特異的PTEN欠損マウスと野生型マウスの間に有意差はなかった。一方、サイトカイン産生能については、CD8陽性T細胞におけるIFN-γおよびTNF-αの産生がB細胞特異的PTEN欠損マウスにおいて有意に減少していた。CD4陽性T細胞におけるIFN-γおよびTNF-αの産生能に有意差はなかった。NK細胞に関しては、腫瘍に浸潤している細胞数およびグランザイムBの産生能いずれにおいてもB細胞特異的PTEN欠損マウスと野生型マウスの間に有意差はなかった。 次に、磁気細胞分離装置を用いてB細胞特異的PTEN欠損マウスの脾臓からB細胞を抽出し、メラノーマ細胞とともに野生型マウスに移入する実験を行った。その結果、B1a細胞とメラノーマ細胞を移入したマウスでは腫瘍増生がコントロール群(メラノーマ細胞単独投与)に比べ増悪し、B1a細胞を除いたB細胞とメラノーマ細胞を移入したマウスではコントロール群と比べ腫瘍増生に変化はなかった。 以上の実験結果より、制御性B細胞はCD8陽性T細胞のTh1サイトカイン産生を抑制することによって腫瘍免疫反応を抑制している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
B細胞特異的PTEN欠損マウスおよび野生型マウスの腫瘍(悪性黒色腫)に浸潤しているB細胞、T細胞、NK細胞それぞれのリンパ球サブセットおよびそれぞれのサブセット毎のサイトカイン産生能の解析は予定通り遂行することができた。また、B細胞特異的PTEN欠損マウス由来B細胞の移入実験も遂行することができた。これらの実験結果により、制御性B細胞はCD8陽性T細胞のTh1サイトカイン産生を抑制することによって腫瘍免疫反応を抑制している可能性を示唆する知見を得ることができた。 一方、マウスの成育が予定より遅れたため、B細胞特異的PTEN欠損マウスのリンパ組織におけるリンパ球のサブセット解析は次年度に行うこととなり、計画の達成度はやや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では行うことのできなかったB細胞特異的PTEN欠損マウスのリンパ組織におけるリンパ球のサブセット解析を行う予定である。 また、腫瘍組織におけるケモカイン(特に、B細胞特異的ケモカインであるCXCL13)産生の評価を行う。腫瘍組織におけるCXCL13の産生量が健常皮膚に比べて増加していることが確認できれば、CXCL13を抑制することにより腫瘍増生がどのように変化するのかを検討する。
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