2016 Fiscal Year Research-status Report
iPS技術によるがん抗原特異的再生T細胞を用いた、大腸癌の選択的細胞移入療法
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16K18450
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 亮 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80571455)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がん抗原を特異的に攻撃する特異的な細胞障害性T細胞からiPS細胞を樹立、これを培養したうえで再び成熟T細胞(CTL)に分化誘導することで、特異的かつ活性の高いクローンを大量に作製するがん免疫療法における新技術の確立と、その大腸癌治療への応用が目的である。また、新しい初代培養法であるCTOS (cancer tissue-originated spheroid)法による、もとの腫瘍の性質・多様性を保持した細胞を用いて、より実臨床に即した実験系を構築できるメリットがある。 まず我々は、複数の市販大腸癌細胞株を用いてスクリーニングを行った。RT-PCRでWT-1の mRNA発現を確認し、ハプロタイプが実験系(HLA-A2402)に合致するSW480, SW620, T84を選択した。WT-1特異的T細胞由来iPSは研究協力を得ている京都大学再生医科学研究所河本研究室にて樹立されており、その再分化誘導プロトコルも河本研のものを用ることで成熟CTLを培養することに成功した。上記細胞株とiPS由来CTLとをディッシュ上で共培養するkilling assayを行ったところ、コントロール群に比べて死細胞率が高く、殺細胞効果が得られることが確認された(FACS解析でannexin V発現を評価)。次に倫理委員会承認(申請番号:G-793)のうえで患者同意の得られた手術切除標本から順次CTOS樹立、保存を開始した。CTOS樹立効率は良好であった。これらについてWT-1発現をreal-time PCRを用いて評価したところ、文献的にはがん抗原WT-1は大腸癌組織の80%以上で隣接正常組織に比べて発現亢進しているとされるが、CTOSにおける陽性率はそれより低い結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
大腸癌細胞株を用いた実験系で、WT-1特異的なiPS細胞由来CTLによる殺細胞効果も確認された。CTOSの樹立効率も良好であり、CTOSに対するCTLの殺細胞効果検証が次のステップである。ただし、FACSを用いてannexin Vで評価する実験系の問題点として、細胞集塊であるCTOSを単細胞に分離する必要がある。細胞間接着やheterogeneityが失われることで、殺細胞効果にバイアスがかかる可能性があり、これを排除するために、申請時に実験計画で挙げたゲル包埋状態でのタイムラプス、またクロムリリースアッセイなどを検討しているが、実験系の確立に至っていない。 また、WT-1発現率が予想より低かったことは、従来の初代培養法とCTOS法で不死化される細胞集団のプロファイルが異なっている可能性がある。この結果から、①実験条件に適合するCTOS株数を確保するために採取すべき臨床検体が増える可能性、②WT-1特異的CTLによって治療効果が得られる患者集団が当初予想よりも小さくなる可能性、が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
あ現時点では大腸癌に対するCTL輸注療法のターゲットとしてWT-1抗原が最有力であり、他の抗原検索と特異的T細胞抽出、iPS化にかかるコストを考慮すると、WT-1に絞って実験を行うのが妥当と考えている。ただし、当初の実験計画にもある通り、NY-Eso1やMART1などよく知られている他のがん特異的抗原についても可能性を排除せずに効果を検証していくのがよいと思われるため、河本研究室で樹立済みのMART-1特異的CTLを用いたスクリーニングも行っていくことを計画している。 CTOSについては、当初予定の80例程度の採取ではる実験群5株、コントロール群5株の樹立に満たない可能性が高い。まず倫理委員会申請の通りの採取を行った後、あらためてスクリーニングのデータをもとに症例数を追加する申請内容修正も検討すべきと思われる。
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Causes of Carryover |
若干の端数が生じた為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて使用予定である。
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