2016 Fiscal Year Research-status Report
脳腫瘍の酸化ストレス抵抗性を打破する新規治療法の開発
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16K18454
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土橋 賢司 九州大学, 大学病院, 医員 (20773675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / 酸化ストレス / xCT / EGFR / 還元型グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脳腫瘍の酸化ストレス回避機構を解明し、治療標的となる細胞集団のマーカーを同定した上で、阻害剤を用いた新規治療法の立案である。そのアプローチとして、細胞膜上のグルタミン酸・シスチンアンチポーターであり、細胞内の重要な抗酸化物質である還元型グルタチオン量を制御するxCTに着目して研究を行った。本研究にあたり事前にxCT発現レベルの解析を行った脳腫瘍細胞株を用いて、xCT発現と同様の発現パターンを示す細胞膜蛋白をスクリーニングした。結果、Epidermal growth factor receptor(EGFR:上皮成長因子受容体)が同様のパターンを示した。また、患者サンプルの免疫染色での検討でも、EGFRとxCTの発現レベルは正に相関していた。次にEGFRとxCTの発現が相関する分子メカニズムを検討した結果、EGFRはxCTと複合体を形成し、xCTの細胞膜安定性を維持ことが明らかになった。よって、EGFR発現が高い細胞では、xCTの発現が安定化し、xCT発現が上昇することが示された。EGFR高発現の脳腫瘍は予後不良であることが知られているが、EGFR高発現の脳腫瘍においてxCTを阻害することが治療につながるかを検討した。EGFR高発現と低発現の脳腫瘍細胞にxCTの阻害剤であるサラゾスルファピリジンを添加すると、EGFR高発現の脳腫瘍ではその生存が著明に抑制されることが明らかになった。EGFR高発現の脳腫瘍はxCTを介して細胞内の還元型グルタチオンレベルが高く維持されており、還元型グルタチオンは細胞内の酸化ストレスを制御するため、xCTが阻害されることで細胞内の活性酸素レベルが上昇し、細胞死に至ることが示唆された。このように、EGFRを高発現している脳腫瘍細胞はxCT阻害剤が有効な可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までの研究において、EGFR高発現脳腫瘍細胞は、xCTに機能的に依存した酸化ストレス回避機構を有しており、xCTを阻害することが治療戦略となりうることが示された。これは当初の計画よりも、早い進展であった。本研究計画を申請してから、本研究が開始するまでも含めて、研究を行える時間が予定以上に確保でき精力的に研究が行えたこと、また共同研究者との研究も順調にいったことが計画以上に進展した理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
EGFR高発現の細胞ではxCT阻害剤が有効であることが示されたが、xCTは脳腫瘍の酸化ストレス回避機構だけでなく、グルタミン酸の排出を介してオートクライン、パラクラインの機序で遊走や浸潤にも重要な可能性が示唆された。脳は元来グルタミン酸が豊富に存在しており、脳腫瘍の更なる治療開発の上で、グルタミン酸を介した遊走・浸潤の制御の研究を検討している。 また研究を進めていく中で、1つの脳腫瘍は、EGFR高発現の腫瘍細胞だけでなく、低発現の細胞も含まれ、ヘテロジェナイティーが存在することを確認した。つまり、EGFR高発現の細胞を標的にするに留まらず、低発現の細胞も駆逐する必要がある。そのためには、腫瘍の発生や悪性化の根本の機序を解明するアプローチが重要と考える。継続的な研究を目指し、どのようなアプローチが解決につながるか、検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
予算が執行される前に、研究が大きく進展し別の研究費で支出し、それ以降新規購入や動物実験を行う必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は当該年度未使用分も合わせると、予定よりも多くの費用がある。当該年度の研究の進展より、新しい解析を計画しており、それに予算を充てる予定である。また、海外の学会で発表が採択されており、それにも追加で支出する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Programmed death-ligand 1 expression is associated with fibrosarcomatous transformation of dermatofibrosarcoma protuberans2017
Author(s)
K Tsuchihashi, H Kusaba, Y Yamada, Y Okumura, H Kumagai, M Komoda, K Uchino, T Yoshihiro, N Tsuruta, F Hanamura, K Inadomi, M Ito, K Sagara, M Nakano, K Nio, K Kohashi, S Arita, H Ariyama, R Tominaga, Y Oda, K Akashi, E Baba
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Journal Title
Molecular and Clinical Oncology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The EGF receptor promotes the malignant potential of glioma by regulating amino acid Transport system xc(-)2016
Author(s)
Tsuchihashi K, Okazaki S, Ohmura M, Ishikawa M, Sampetrean O, Onishi N, Wakimoto H, Yoshikawa M, Seishima R, Iwasaki Y, Morikawa T, Abe S, Takao A, Shimizu M, Masuko T, Nagane M, Furnari FB, Akiyama T, Suematsu M, Baba E, Akashi K, Saya H, Nagano O.
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Journal Title
Cancer Research
Volume: 76
Pages: 2954-2963
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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