2016 Fiscal Year Research-status Report
肺癌におけるヌクレオチド逆転写酵素阻害剤のドラッグリポジショニングの検討
Project/Area Number |
16K18464
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
越智 宣昭 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80611615)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | SN-38 / abacavir / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
抗HIV薬として用いられるヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)であるabacavirが成人T細胞性リンパ腫細胞において二重鎖断裂を誘導し細胞死をもたらすことが報告され、その効果規定因子としてATL細胞におけるTyrosyl-DNA phosphodiesterase 1 (Tdp1)の発現低下にあることが示されている。本研究はいくつかの肺癌細胞株においてTdp1の発現が極めて低いことに着目し、トポイソメラーゼI阻害剤SN-38との併用で相乗効果を期待するものである。 35種の肺癌細胞株のうち陰性コントロールとしたMT2細胞株よりもTdp1の発現が低い細胞株は24種であった。Oncogene driverであるEGFR遺伝子変異の有無やKRAS、MET増幅、ALK融合遺伝子の有無とTdp1発現の間に一定の傾向は認めなかった。 次に、Tdp1発現が特に低い9種の細胞株においてabacavirとSN-38の併用効果を検討したところ8種で幾つかの濃度比で、相乗効果を認めた。一方で、Tdp1の発現が著明に高い2種の細胞株のうち1種でも相乗効果を認めた。 Tdp1低発現細胞株である2種の細胞株(HOP62、H522)に対してabacavirを低濃度から持続暴露することで、abacavirへの耐性細胞株の樹立を目指している。現時点でH522は親株と比較して2倍以上、HOP62は5倍以上の耐性を獲得している。今後、クローニングを行い、耐性機序の解析を予定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とした細胞株の数を増やしたため解析に時間がかかっている。その中でどういった細胞株を対象に今後の主たる研究を進めていくかが課題である。そのためにTdp2遺伝子発現についても早急に解析を進め、細胞株を絞り込む際のデータとする。
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Strategy for Future Research Activity |
対象とする細胞株をある程度絞り、主たる解析を進める。そのためにTdp2遺伝子発現についても早急に解析を進め、細胞株を絞り込む際のデータとする。その後、Top2阻害剤であるamrubicinの感受性との関連を検討する。 Tdp1低発現細胞株にTdp1を強制発現、またはノックアウトし、SN-38, abacavirへの感受性変化、併用効果を確認する。Tdp1をトランスフェクションした細胞を現在作製中である。 HOP62, H522から作製したabacavir耐性株のクローニングと解析を進める。
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Causes of Carryover |
主に薬剤感受性の検討に時間を費やしたため、余剰金が生じた。当初予定していたよりも解析対象の細胞種を増やしたためである。マイクロアレイや次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析を予定していたが、まだ行えていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
樹立した2種のabacavir耐性株に対してマイクロアレイまたは次世代シークエンスによる解析を行い、abacavir耐性に関わる遺伝子解析を行う。ある程度対象遺伝子を絞ったのち、タンパクレベルでの解析を進めるため、特異的抗体の購入などに充てる予定である。
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