2017 Fiscal Year Research-status Report
新規化合物の卵巣がん腹膜播種に対する治療薬としての臨床応用に向けた研究
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16K18468
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Research Institution | Kanagawa Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
室井 敦 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 技師・研究員 (60609402)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣がんは年間に約10,000人の罹患が報告され、4,000人以上の患者が死亡する。早期発見が困難であることから発見時に既に進行していることが多く、約50%が進行がんとして発見される。そのため治療成績は芳しくない。主にパクリタキセルやプラチナ製剤による治療が標準化学療法として行われるが、進行卵巣がんの10年生存率は約10%とされる。本研究では、卵巣がん細胞株に強い殺細胞効果を示す新規化合物PACMA-Xの臨床応用に向けた作用メカニズムの解明を行う。 平成29年度は主に、PACMA-Xによって誘導されるがん細胞の細胞死について解析を行った。これまでの研究から、PACMA-X処理を行った卵巣明細胞腺癌細胞株では非常に短時間で細胞死が誘導され、尚且つその誘導には活性酸素の産生が関与することが示唆されていた。PACMA-X処理を行った細胞の形態の経時変化を顕微鏡を用いて詳細に観察したところ、分子標的薬処理を行ったがん細胞の細胞死に一般的に見られるアポトーシスやネクローシスとは異なる様式の細胞死であることが示唆された。この細胞死に繋がるシグナル伝達経路への関与が報告されているタンパク質がPACMA-X処理後の卵巣明細胞腺癌細胞でも活性化されていたことから、PACMA-Xが一般的に臨床に用いられている分子標的薬とは全く異なる作用メカニズムで細胞死を引き起こす可能性が示された。このことは、既存の分子標的薬に耐性を持つがんにもPACMA-Xが効果を示す可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究から当該化合物が結合するタンパク質が同定された。臨床サンプルにおけるこのタンパク質の発現を確認することでPACMA-X投与に適した症例をスクリーニングする際に有用な情報を取得することを計画していたがまだ実行できていない。また、29年度中の論文化を目指していたが現在準備を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床サンプルにおけるPACMA-X結合タンパク質の発現を確認する。また、30年度中に論文の投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に行う予定であった解析および論文投稿を30年度に延期した。これらの目的の遂行のために30年度に使用する予定である。
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