2017 Fiscal Year Research-status Report
PAR化修飾によるクロマチン高次構造制御・遺伝子転写調節機構の包括的解析
Project/Area Number |
16K18469
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤木 克則 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (10646730)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PAR化 / 次世代シーケンサー / 1細胞解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はクロマチン上のタンパク質ポリADPリボシル化修飾がクロマチン高次構造にどのような影響を与えるのかを、次世代シーケンサーを用いた新たな解析手法を開発することによって明らかにすることである。当初の計画では、細胞中のクロマチン高次構造を既存のChIA-PETやMNase-seq等の手法を用いて解析することを目標としていたが、昨年度の時点において、昨今の研究潮流や他グループの類似研究の動向から判断して、1細胞の解像度でこれら高次構造を明らかにできる新手法を開発することが望ましいと判断された。当該年度は、前年度に開発した1細胞の解像度でクロマチン構造を解析するための新技術に必要な基礎技術(マイクロ流体チップの開発、微小液滴への細胞・ビーズ封入技術の確立、アダプター付加オリゴビーズの設計)を用いて、これらを組み合わせて一連の実験系を組み立てるとともに、さらに実際の細胞サンプルを用いて解析が行えるところまで実験の最適化を行い、次世代シーケンサーを用いて得られたDNAライブラリをシークエンス解析を行った。また、ここから出力された大量のデータを解析するための情報学的解析プログラム(細胞固有バーコード配列によるシークエンスデータの振り分け、ゲノム上へのマッピング、マッピングデータの統計解析ツール、等)の開発を行った。得られたデータの内容を精査した結果、1細胞のデータをより深く読み込む余地がある、データの偏りが観察される、などといったwetの手法における改良点が見出されたため、これらを実験にフィードバックさせることで、手法のさらなる改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度の目標は、PAR化によるクロマチン高次構造変化をゲノムワイドに解析するための次世代シーケンサーを用いた新手法の確立であった。当初の予定通り1細胞からのクロマチン高次構造ライブラリの作成は当該年度の早い段階で達成し、これを用いて実際に次世代シーケンサーによる配列解読が行えることを確認した。また、得られたデータを用いて、これを解析するためのコンピュータープログラムの開発にも着手し、シーケンスデータからクロマチン高次構造に関するデータを抽出することにも成功している。また解析の過程において、得られたデータにシーケンス領域の偏りが見られることや、PCRバイアスが多くかかっていることも判明した。この結果をもとに1細胞解析におけるwetの実験手法の改良点を洗い出し、この新手法の確立に向けたフィードバックを得ることができた。技術開発においては常に新技術のブラッシュアップが伴うものであり完成というものは存在しないが、当該年度において目標であった新手法の確立については、1細胞からクロマチン高次構造データが抽出できた点で一応の達成を見たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した新手法をルーティンで行えるレベルまで最適化するとともに、情報解析のパイプラインを整備する。この手法を用いて、クロマチンPAR化に伴う、クロマチン高次構造の局所的変化の様子を解析する。PAR化の出現状況としては、遺伝子の転写制御やDNA損傷などが考えられる。これらの刺激がPAR化を介して個々の細胞のクロマチン状態にどのような変化を与えるのかを解析する。また、ヘテロな細胞集団である組織由来のサンプルや、PAR化がその悪性化機序に大きく関わっているとされるがん組織などにおいて、この新手法を用いて個々の細胞のPAR化情報を取得し、細胞間のPAR化刺激に関する感受性の差、細胞の個性に関する解析を行う。得られたデータをまとめ、学会等で発表を行うとともに、論文として発表する。
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