2017 Fiscal Year Research-status Report
難病解明に向けた大規模HLAシークエンスと多重リスク因子の包括的解析法の確立
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16K18474
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 修治 京都大学, 医学研究科, 助教 (00525404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HLA / ジェノタイピング / 次世代シークエンサー / ソフトウェア / マルチプレックスPCR / HTLV-1 / 関連解析 / 遺伝統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、対照群の大規模サンプルにおけるHLA遺伝子シークエンス・タイピング技術の確立と実施及び得られた結果を用いて、様々な情報と複合的に絡めたHLA関連疾患の解析をするための統計モデル確立を目指している。 本年度は昨年度において開発した、次世代シークエンサーデータからHLAアレルをタイピングする手法HLA-HD(Kawaguchi et al., Human Mutation, 2017)に関して、ホームページを通じた公開をおこなった。さらに、ソフトウェアのアップデートをおこない、IPD-IMGT/HLAデータベースの最新アレル情報を自動で取り込み更新する機能を搭載した。また、昨年度特許出願をおこなったLong-PCR用マルチプレックスPCRプライマーセットに関しては、海外への展開を見越してPCT出願をおこなった。 HLAデータを用いた難病解析に関しては、HTLV-1関連脊髄症(HAM)患者、無症候性キャリア群(対照群)、日本全国対照群サンプルの約5,000検体におけるHLA遺伝子のシークエンスおよびタイピングを実施し、発症や感染との関連解析をおこなった。また、300検体におけるインフルエンザワクチン接種による抗体価変動と全ゲノムシークエンスデータからのHLAアレルタイピング結果を用いた解析から、ワクチン接種における免疫獲得とHLAアレル種類との関係性を明らかにした(論文投稿準備中)。 完全長配列が未だ未決定であるHLAアレルに対して未知領域配列の決定に向け、開発したPCRプライマーセットを用いて、精度は低いが同染色体の全長情報が得られるロングリードのシークエンスと精度の高いショートリードの情報を融合して解析することで、より信頼性の高いHLAリファレンスを作成すること目指した。本年度においてはシークエンスに向けたサンプル準備が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度構築した、HLAシークエンス・タイピング技術による解析検体数はすでに5,000を超え、安価でありながらも精度の高いHLAアレルの決定を可能とするなど、高い有効性を示した。HLA-HDの技術は本年度においても逐次的に更新を続けており、ホームページ公開以降、現在までに19カ国の50機関以上において利用登録が得られている。 関連解析に関しては、逐次的決定法におけるローカルミニマムへの到達による誤った変数選択を防ぐための、新たな最適探査方法の開発を進めた。本年度は実データに従来法を用いた検証を行った。その結果、従来法では誤った解が得られる事例が存在し、詳細な解析からその原因が概ね判明した。そこで、その問題解決が可能な変数決定法の完成に向けて探査プロセスの改良を行い、試作モデルの構築をおこなった。 HLAの完全長配列リファレンスの作成に関しては、精度の高いショートリードシークエンスデータのアセンブリによる配列決定法に加え、精度は劣るがロングリードのシークエンス結果を含めることでphase ambiguityの精度向上を目指すこととしたため、若干の工程追加が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、新規HLA関連解析手法の完成を目指す。本年度の試作モデルを基に、難病疾患の種類を増やしつつ、本研究で得られた実データに適用しながら開発を進める。この際、HLA以外の領域および疾患に関わる情報を加えることを検討する。また、これらの情報追加に伴う組み合わせ数増加による計算量増加の影響を回避するための効率的な探査法を考案する。前向きコホートをおこなっている疾患等に対する、時系列解析データを考慮したモデル拡張も計画している。 統計モデルの完成後、モデルケースとなる難病疾患をいくつか設定した上で開発モデルを適用し、得られた知見をもとにした診断パネルの作成を試みる。このとき、最適なパネルを選択するための作成アルゴリズム開発も進める。 次年度はじめには一定数におけるロングリードのシークエンスが完了する予定である。そこで、ロングリードシークエンスで得られる情報と、これまでのショートリードのシークエンス結果と併せてHLAの完全長配列を決定する手法を考案し、これより得られるHLA配列を関連解析手法に適用することで情報の拡張を測る。
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Remarks |
HLAアレルタイピングソフトHLA-HDの使用法、ダウンロードに関するホームページ
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Research Products
(5 results)