2017 Fiscal Year Research-status Report
単細胞生物クラミドモナスのmiRNAによる生殖制御・環境適応制御の分子機構解明
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16K18480
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山崎 朋人 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 助教 (70512060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クラミドモナス / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に取得したmRNA-seqデータを詳細に解析した。野生型株において接合子特異的に発現が誘導される遺伝子群、即ち葉緑体DNAの片親遺伝制御に関わる可能性の高い遺伝子に注目し、野生型株とAGO3変異株の間で発現量が有意に異なる遺伝子を探索した。その結果、接合型+株の核ゲノム上の性決定領域にコードされ、接合直後に発現が上昇する機能未知遺伝子EZY2の発現誘導がAGO3変異株で抑えられている事が分かった。立体構造モデルからその機能を予測した結果(SWISS-MODEL)、DNase活性を持つ可能性が示された。 クラミドモナスmiRNAの発現プロファイルは、窒素欠乏や硫黄欠乏による栄養環境の変化によって激変する事が知られていた。しかしながらそういった環境下においてmiRNA変異株の増殖速度に変化は見られず、窒素欠乏、硫黄欠乏環境への適応においてmiRNAの役割は限定的であることを発表した(アメリカの研究グループとの共同研究 Voshall et al., Sci Rep. 2017)。 一方、AGO3の主要作用モードは翻訳阻害であることから、miRNAの直接の標的をAGO3のRNA immunoprecipitation-seq(AGO3に結合するmRNAの網羅的解析)で解析したところ、光化学系IとIIのステート遷移で重要な働きをするLHCB4の翻訳がmiRNAによって抑制されていることが見いだされた。LHCB4タンパクはmiRNA変異株において増加しており、またそのmRNAのポリA鎖長はmiRNA変異株において短くなっていた。こうしたことから、クラミドモナスにおけるmiRNAを介した翻訳阻害に動物で見られるようなポリAの短鎖化は伴わず、むしろmRNAの安定化や貯蔵に寄与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラミドモナス葉緑体の母性遺伝制御は、遺伝しない側の葉緑体DNAの不安定化が主な原因であると考えられている。こうした点から、DNase活性をもつ可能性のあるEZY2遺伝子がAGO3変異株において発現が抑えられている点は、このEZY2が葉緑体DNAの不安定化に大きく寄与していることを予測させる結果であり、miRNAを介した母性遺伝制御の分子メカニズム解明に迫る大きな発見であった。 また、窒素欠乏、硫黄欠乏環境への適応においてmiRNAの役割は限定的であることを論文発表した一方で、当初計画通り行ったRIP-seqにより、LHCB4を含めたいくつかの遺伝子がAGO3によって翻訳制御されている可能性が示され、クラミドモナスにおけるmiRNAの新たな役割の一端が見えてきた。 こうしたことから、本研究は現在までおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
母性遺伝の厳密性が乱れる時、同時に発現が乱れるEZY2の関与が疑われるので、この遺伝子をCRIPSR/Cas9によって破壊する。破壊した株で葉緑体母性遺伝の厳密性を確認し、クラミドモナスでのEZY2の過剰発現による母性遺伝への影響、大腸菌で過剰発現させたEZY2の精製とDNase活性の確認などの実験を行う。 また、クラミドモナスにおけるmiRNAを介した翻訳阻害には、動物で見られるようなポリAの短鎖化は伴わず、むしろmRNAの安定化や貯蔵に寄与している可能性が示された。LHCB4をはじめとしたいくつかの翻訳阻害標的遺伝子mRNAの詳細な解析から、このアイデア支持する証拠を集め、クラミドモナスにおけるmiRNAを介した翻訳阻害メカニズムのモデルを提唱する事を目指す。
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Causes of Carryover |
研究推進に必要な消耗品等の使用効率化に努め、物品費の消費を抑えられた結果次年度使用額が生じた。 この次年度使用額は平成30年度分の助成金と合わせて物品費に充て、研究の加速化を図る。
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Remarks |
国際シンポジウム「ファイトジーンの可能性と未来 IX」招待講演 タイトル“microRNA biogenesis and function in Chlamydomonas reinhardtii” 平成29年10月20日
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