2016 Fiscal Year Research-status Report
雑食性外来生物アメリカザリガニが希少種に与える直接的影響の評価
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16K18481
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岸本 圭子 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (80525692)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 侵略的外来生物 / アメリカザリガニ / DNAバーコーディング / 胃内容物分析 / 希少種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、侵略的外来生物種のアメリカザリガニの効果的な駆除対策の実施に向けて、アメリカザリガニの胃内容物をDNAバーコーディングによって明らかにし、希少生物に与える直接的な影響の評価を目指す。 1)餌候補生物の種名に紐づけられたDNAバーコードライブラリの作成 新潟県佐渡市の5箇所のビオトープで毎月1回、餌候補生物を採集した。それらの生物の同定を行い40種の生物を確認した。一部の個体からDNAを抽出し、餌候補生物のDNAバーコードデータベース構築のための準備を進めた。同時に、それまでにビオトープで採集されている既存の標本の分類作業と、それらの既存の標本からDNA検出が可能かを検討した。 2)アメリカザリガニの胃内容物分析 餌候補生物を採集した同じ調査地と同じ時期に、塩ビ管を使ったトラップおよびタモ網、見つけ採り調査を実施し、アメリカザリガニを採集した。全部で832個体を解剖し胃を取り出した。一部、胃内容物の観察から、アメリカザリガニが共食いをしていること、落ち葉を比較的多く利用していることなどがわかった。また、昆虫の中では、陸生の昆虫も食べていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
餌候補生物の種名に紐づけられたDNAバーコードライブラリの作成については、サンプリングとDNA抽出は概ね計画通り進んだ。しかし、当初実験を計画していた実験室の整備が遅れたことと機器の故障により、PCR増幅のための実験が計画通り進まなかったため、バーコード情報の分析と整理が計画より遅れた。 アメリカザリガニの胃内容物分析については、サンプリングと解剖は計画以上に進んだ。しかし、予備実験を行った結果、当初計画していた餌生物のソーティングによるDNA抽出が困難であることがわかり、手法の変更が生じたため胃内容物に残されたDNAの検出が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
餌候補生物のサンプリングはほぼ完了しているため、平成29年度はDNAライブラリ構築に向けて、残りの個体のDNA抽出を引き続き行うとともに、それ以降の解析を中心に進める。また、標本情報とDNAバーコード情報を登録するためのBOLDオンライン情報システムを使ってビオトープで確認された生物種のバーコード情報を確認したところ、一部の種はすでにバーコード情報が充実していたため、これらの種に関しては当初予定していた個体数を減らして解析を進める。それによって、平成28年度に生じた遅れを取り戻すことが可能と考えている。 アメリカザリガニの胃内容物分析については、当初計画していた実験方法を再検討し、新潟大学五十嵐キャンパスの研究室においてクローニング法による餌生物DNAの検出を試みる。 これらの結果をもとに、アメリカザリガニの補食-被食関係を明らかにし、投稿論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
申請時の計画では、餌生物候補のDNAバーコードライブラリ作成のためにサンプリングした生物のPCR増幅とバーコード領域の解析を研究代表者が所属する佐渡島の朱鷺・自然再生学研究センターで行う予定だったが、実験室の整備が遅れたことと機器の故障が発生し、解析が計画通り進まなかった。そのため、それらの解析のために使う予定だった費用を次年度に使う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度末までには解析の準備が整ったため、餌生物候補のDNAバーコードライブラリ作成に必要な解析を実行するための試薬類、実験消耗品類、解析ソフトの購入に使う。また、平成29年度に計画しているアメリカザリガニの胃内容物分析は所属している研究室では実行できないため、新潟大学の五十嵐キャンパスの実験室で行う。そのための出張費と、分析に使う試薬類を購入する。
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