2017 Fiscal Year Research-status Report
オランウータンにおける近赤外分光法を用いた迅速な糞中発情ホルモン濃度測定法の確立
Project/Area Number |
16K18482
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 こづえ 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (50724233)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ステロイドホルモン / 野生動物 / 繁殖モニタリング / 迅速アッセイ / イムノクロマト |
Outline of Annual Research Achievements |
希少種の繁殖を成功させるためには、雌の交配適期を迅速に予測することが重要である。本研究では、ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)に着目して、飼育現場および生息地の野外で迅速かつ簡便に交配適期を特定する手法の確立を目指して研究を行っている。 昨年度の研究成果を踏まえて、野外環境下で迅速にホルモンを抽出する方法(Field-friendly法)を検討した。Field-friendly法および従来法によるホルモン抽出の比較を行った結果、それぞれのホルモン測定値における相関係数はR2=0.88(エストラジオール-17β)、0.51(プロゲステロン)、および0.74(コルチゾール)であった。概ね良好な結果ではあったが、いずれも相関係数が0.9を超えることはなく、さらなる方法の検討が必要であると考えられた。 また、昨年度までは迅速アッセイに近赤外分光法を用いていたが、糞中の夾雑物によってスペクトルが複雑化することが確認されたため、本年度は他の迅速アッセイ法としてイムノクロマト法を応用した。その結果、イムノクロマト法を用いてコルチゾールの標準物を用いて定量したところ、3.9-5,000 ng/mlの範囲内において高い精度(R2=0.997)で濃度測定が可能であることが示された。今後は、本手法を用いて糞抽出物でも同精度でコルチゾール濃度測定ができるように検討するとともに、他のホルモン(エストラジオール‐17βなど)の濃度測定への応用も試みる予定である。 本研究成果は鳥取大学乾燥地研究センター共同利用・共同研究において優秀発表賞を受賞した。その他にも、ホルモン濃度測定に関する研究について論文の共著者として発表するに至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
排泄物を用いたホルモン濃度測定に関して、英語論文および国内外の学会にて研究成果を公表した。実験に関しては、新規な方法としてイムノクロマト法を用いた迅速アッセイ法の着手に至り、測定の可能性をすでに今年度中に確認することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は近赤外分光法に加えてイムノクロマト法にも焦点を当てることで、より実践型のホルモン濃度迅速アッセイ法の確立を目指す。すでに標準物を用いて測定精度を確認しているため、今後は排泄物サンプルを用いた測定精度の向上を図る。
|
Causes of Carryover |
これまでの研究成果により、迅速ホルモン分析の可能性を見出した。本来、翌年度にホルモン濃度測定リーダーおよび測定ソフトを購入する予定であったが、予定よりも早くに本手法の可能性を見出したため、前倒し請求によりリーダーとソフトを購入した。しかし、前倒し請求後に、通常よりも安価に測定リーダーを設計し購入できたため、次年度使用額が生じた。 本使用額は、本年度においてイムノクロマト法に関わる試薬などの消耗品に使用し、より複数種のホルモン濃度測定法の開発に応用する計画である。
|